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小説という名の日記B(栞機能無し)
30

「はいはい、分かったよ。で?湖南は何かあった?」

また話が湖南に戻った。
けれどそれを聞かれても欲しいものなんかない。
店を回っている間も、興味を引くものは何もなかった。
黙って首を振る湖南に、晴翔が機嫌を悪くした様子はなかった。
優しげな眼差しで、柔らかく微笑んだ。

「そっか、じゃあ欲しいのがあったら言って」

どうせ見て回っても欲しいものなんてない。
何も欲しくないのに興味を引かれる訳がない。
きっと欲しいものなんて言う事はないだろうと思いながらも、黙って頷いておいた。



聖那自身の買い物は三個までと決められているらしい。
犬の置物の他にトカゲとイグアナのぬいぐるみを買っていた。
更に鳩の置物を強請った聖那を晴翔が諫めれば、悄々と元に戻していた。

聖那はあんなに欲しいものがあるのに、湖南には欲しいものがない。
いっそ聖那の欲しがった鳩の置物を強請ってプレゼントしてやろうかと思ったけれど、晴翔に却下されそうな気がして止めた。



意外にも小物が好きなんだろうか。
ちょっと付き合って。と連れて行かれたのは、小さなアクセサリーショップだった。
晴翔が店内を見て回っている間、聖那も小物を見ていた。
けれど聖那は生物しか興味がなかったらしい。詰まらなそうに店内を歩き回っていた。
真剣に小物を眺める晴翔の邪魔も出来なくて、本当に詰まらなそうにしていた。

湖南も店内をゆっくりと眺めて歩いた。
大きな石を嵌め込んだ指輪や、小さな欠片が散りばめられたネックレス。いろんな小物があったが、矢張り湖南はどうしても欲しいとは思わなかった。
ただ落ち着いた銀色のネックレスだけは立ち止まって見ていたけれど、欲しいと口にすることはなかった。



「これが気に入った?」

何時の間にか晴翔が隣に来ていた。
湖南の視線を追って銀色のネックレスを手に取る。
気に入った訳じゃない。ただ目に留まったから見ていただけだ。
湖南が欲しいと頷けば、値が張るにも拘わらず晴翔が買ってきそうな気がした。
流石にそれは自意識過剰だと、自分に言い聞かせた。

「別に・・・」

素っ気なく吐き捨てて他の小物を見て回った。



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あきゅろす。
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