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小説という名の日記B(栞機能無し)
29

あんなに時間の掛かった山道が、車だと本当に速かった。
速いと言っても、山奥から街までの距離は相当ある。
時間が掛かるには掛かったが、息切れもせず楽に移動するのは車ならではで、矢張り車無しでは身動きが取れない場所に研究所が建っていたんだと今更ながらに実感した。

助手席に当然のように聖那が乗っていた。
道すがら話し掛ける聖那に、運転に注意しながら晴翔が受け答えしていた。
湖南は後ろの席から過ぎていく景色を眺めていた。
時折晴翔に話し掛けられたが、運転に集中して、と突き放した。



街に着いて車を停めて歩いた。
その時も聖那が晴翔の横に並び腕を絡ませていた。
湖南は二人の後を黙ってついていった。

時折振り返り湖南を確認する晴翔と目が合うと、視線を逸らした。
晴翔が立ち止まり湖南に話し掛けようとするたびに、早く早くと聖那が腕を引っ張って急かした。

何をしに来たんだろう。
来なければよかった。
前を歩く二人を眺めながら思った。



けれども流石に店に入れば、聖那も纏わり付けなくなった。
次から次に必要なものをカートに入れていく。
これが欲しいと聖那がカートに放り込んだのは、犬の置物だった。
動物と言うか生物を集めているのだと言う。
聖那の部屋には沢山の生物の置物があるらしく、よく飽きないな、と晴翔が苦笑していた。

大量の荷物を一度車に積んで再び街を歩いた。
さて、そろそろ俺も欲しいもの探そうかな。
腕を絡めようとしてきた聖那をさり気なく退けて、晴翔が湖南の傍に寄ってきた。



「湖南、何か欲しいものある?」

「僕にも聞いてよ」

「聖那は聞かなくても、欲しいものがあったら直ぐに持ってくるだろ?」

「そうだけど。でも聞いてよ」

アンドロイドが嫉妬という感情を覚えつつある。
晴翔が湖南に話し掛けた途端に、不満げな声を漏らした。
矢張り恋はプラスの感情だけではない。
裕進が幾ら負の感情を学習させまいとしても、こうして裕進の居ない所で負の感情を学習していく。

晴翔は聖那の扱いに慣れていて、適当な返事をしながらも聖那の頭を撫でて上手くあしらっていた。



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