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小説という名の日記B(栞機能無し)
27

暫く買い出しをしてなかったと苦笑している。
悪いが街まで付き合ってくれないか。
湖南を見て言った気がしたが、返事をしたのは聖那だった。

「じゃあ僕、荷物を持つよ」

「そうしてくれたら助かる。湖南も一緒だからな」

「うん、分かったよ。必要なものを買わなきゃね」

全て返事したのは聖那で、湖南はそれを黙って見ていた。
凝と見つめる裕進の視線が、聖那に向いていたのか湖南に向いていたのか分からない。
アンドロイドの恋を邪魔する存在の動向を観察していたのかもしれなかった。
晴翔が湖南に話し掛けるたびに、晴翔が湖南に微笑むたびに、その視線が鋭くなった気がした。



おはようとホットミルクを手に、何時ものように晴翔が部屋に入ってきた。
何時もならそこで起きようかという気になっていた。
けれども、そうだ今日は街へ行くんだ、そう思い出した途端、起きる気にならなくなった。
以前の朝の調子の悪さが舞い戻ってきたかのようだった。

湖南の不機嫌さを敏感に察知したらしい。
こら起きろ、と湖南の鼻を摘まんで、悪戯っぽく笑った。
指が邪魔で晴翔の手を撥ね退け起き上がると、カップのミルクがチャプンと揺れた。
おっと、危ねえ。言葉は慌てていたが、落ち着いた動作でカップを両手で持ち直す。
揺れの治まったのを確認し、はい飲んで、とミルクを差し出してきた。

「湖南、何か欲しいものある?」

「何もないよ」

突き返しても無駄なような気がして、渋々カップを受け取った。
欲しいものなんて何一つない。
何も欲しくない。
一口飲むとまだ熱い液体がじんわりと喉を伝い降りていった。



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