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小説という名の日記B(栞機能無し)
23

毎朝ホットミルクを作ってやる。それは口先だけではなかった。
毎朝湯気の立つカップ片手に、晴翔が部屋を訪れるようになった。
仕事前だから早いのは分かるが、毎朝晴翔によって起こされる。

裕進も聖那も起きている時間だけれど、湖南はこの時間に誰かに会うのが嫌で、最初の頃に自分が起きてくるまではそっとしてくれと頼んでいた。
朝の機嫌の悪さは、一日の始まりを意味するものだった。

けれどもそれを無視して訪れるようになった晴翔に、文句を言う気にはなれなかった。
一日の始まり。今まではそれが嫌で嫌で仕方がなかった。
なのに晴翔がゆったりした笑顔でカップ片手に起こしに来れば、さて起きようかという気になった。
素直にお早うと返すのは気まずくて、早く仕事しろと追い出したが、晴翔はそんな湖南をも余裕をもって受け止めていた。



「ねえ、湖南」

裕進も晴翔も研究所で仕事をしていた。
住居には湖南と聖那の二人だけだった。

「湖南、好きってどういうのか知ってる?」

益々人間味を増したアンドロイドは、恋愛話をしたくなったらしい。

聖那はまだ嫉妬という感情を覚えてない。
湖南と晴翔の話す姿を見て胸が痛くなる。
以前聖那が恋を自覚した時に裕進に打ち明けた症状。
これは嫉妬も入っていると思うのだが、意識して裕進は教えてないようだった。

だから湖南に恋愛話をしてくるのだろう。
晴翔と話していた湖南に嫉妬したにも拘わらず、だ。
そこにも裕進の愛情が透けてみえているような気がした。



「さあね、僕は人を好きになったことがないから」

ちらりと脳裏に過ぎった人物。
過ぎった理由は考えなかった。
振り払うように直ぐに答えを出した。

「そうなんだ。湖南も誰か好きになったらいいのにね」

「何で?」

「だって僕と恋の話が出来るでしょ」



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あきゅろす。
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