小説という名の日記B(栞機能無し)
20
「僕は裕進さんに嫌われてる」
「そんな事分からないじゃないか」
「分かるよ、分かるから出て行くって言ってるんだ」
「けどあの人が湖南に嫌いだってはっきり言った訳じゃないだろ」
「そうだけど、何時まで居る心算だなんて嫌いだって言ってるようなもんじゃないか」
「けど出て行けとも言われてないだろ。だったら出て行くなよ」
「何それ。出て行けって言われなきゃ出て行けないの?」
「裕進さんがはっきり拒絶するまで湖南が出て行く必要はない」
何だそれ。言い合っている内に馬鹿馬鹿しくなってきた。
何でそんなに必死に出て行かせまいとしているのか分からないけれど、抱き締めてくる腕が何時まで経っても緩まらない。
「どうしてそんなに引き止めたい訳?」
晴翔の一番は裕進と聖那の筈だ。
なのに湖南を引き止める意味が本当に分からない。
裕進がはっきり言わないからと言っても、裕進と湖南が話している所など見たことがないだろうに。
それは裕進が湖南と話をしたいと思ってないと言うことだ。
見たことがないのだからそれくらい分かるだろうに、何故引き止めようとするんだろう。
「湖南が居なくなれば寂しい。湖南が裕進さんの傍に居て、本当に辛くなるまでは出て行かないでほしい」
その理由も凄く理不尽なものだった。
もしも裕進の傍に居て辛いかと聞かれれば、きっと湖南は辛くないと答える。
それを分かっているかのように、問うこともなく出て行かないでほしいと訴えてくる。
湖南が居なくなれば寂しいと、嘘か本当か分からない理由を押し付けてくる。
「ホットミルク朝も作ろうか。よし、毎朝作ろう」
そしたらまだ居てくれるだろ?
何だその発想は。突然脱力するような事を言われ、張り詰めていた気が抜けた。
引き止める餌がホットミルクなんだ。
そう思ったら何だか意固地になった自分が馬鹿らしくなった。
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