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小説という名の日記B(栞機能無し)
16

聖那の隙を見てか、晴翔が湖南に与えられた部屋に入ってきた。

「湖南、起きてる?」

「こんな時間に何?」

「良かった、起きてたか」

「起きてたら何?用があるんじゃないの?」

「用って言うより、湖南とゆっくり話したくてさ」

最近二人だけで碌に話せてないと晴翔が言う。
だから何なんだろう。
裕進の一番は聖那で、裕進の助手である晴翔の一番も聖那だ。
態々湖南に会いにくる意味が分からない。
晴翔がこの前聖那に言っていた台詞を思い出す。

「僕より聖那と話をした方がいいんじゃない?人間らしさを学習してる最中なんでしょ。裕進さんも喜ぶから湖南の相手してやりなよ」

寄せられる好意の種類は知らなくても、感情が増えていく聖那を、この前晴翔は誉めていた。



其の儘晴翔を追い出そうとしたけれど、その必要はなかった。

「湖南、晴翔来てる?」

回路を休める為に人間でいう睡眠をとっている時間帯。
聖那が晴翔を探しにきた。

「こら聖那、まだ寝てなかったのか」

「だって晴翔の部屋に行ったら居なかったんだもん」

「俺が居なくても、今は休んでる時間だろ」

「うん、けどもし仲間外れだったら嫌だと思って」

自我の強さに苦笑しながらも、これ以上は湖南に迷惑が掛かると思ったのか、晴翔は湖南におやすみと告げて、聖那を宥めながら出て行った。



裕進が聖那の恋を応援しているのは知っていた。
以前この耳で応援すると聖那に言っているのを聞いたから、覚悟という程のものではないが、記憶から忘れてはいなかった。

風呂に入ろうと部屋を出た時、足が止まった。
何故この人が此処に居るのだろう。
何時もこの人が此処に居る時は、その傍に聖那が居る。
それなのに今日は一人。聖那も晴翔も居ない。
湖南を捉えたその眼差しに、もしかしたら態と二人を此処から追い出したのではないかと思った。

「聖那は興味のあるものを拾ってくる癖がある。あれが拾って来たから置いていた」

裕進の視線が湖南を見据えていた。
何も知らない裕進からしたら湖南は赤の他人。
裕進の生活に割り込んできた者。
冷たい視線が湖南を射抜いた。



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あきゅろす。
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