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小説という名の日記B(栞機能無し)
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「ちくりって事は痛いのかい?」

「痛い?これが痛い?そっか、うん、痛い」

「どんな時に痛いんだ?」

「えとね、晴翔が湖南に話し掛けてた時」

突然出て来た自分の名前に、思わず肩が跳ねた。
何だろう、このアンドロイドは何を言ってるんだろう。
まさかとは思う。
だがその言い方は。それではまるで。

そう思ったのは裕進も同じだったようだ。
ピクリと眉を動かした後、あくまでも冷静に落ち着いた声音で問うていく。



「それじゃあ彼と晴翔が話していた時、ちくりの他にも何時もと違う感覚はあるかい?」

「うん、此処を掴んだらこんな感じかなって思う」

「さっきと同じ位置だね。じゃあお前が晴翔と二人で居る時に、嬉しいと楽しいの他で新しい感覚はあるかい?」

「うん、晴翔と居ると此処がこんな感じになる」

心臓に置いた片手を結んでは開き結んでは開き、それを何度も繰り返していた。



裕進はそんな聖那を思案深く眺めていた。
問診だけでアンドロイドの体に触れる事もなかった。
体に触れずとも診断結果は出ていた。

裕進が子供の成長を見守るような眼差しで聖那を見ていた。
成長していくアンドロイドを感慨深げに見つめていた。

「聖那、それは恋をしているんだよ」

裕進がアンドロイドに新たな感情を教えた。
その瞬間、湖南の心臓がどくりと嫌な音を立てた。
その後に続く動悸が治まらず、湖南は心臓を押さえつけた。



「恋?」

「そう、お前は晴翔に恋をしてるんだ」

「恋ってお父さんがお母さんを愛してるっていうのと同じ?」

「同じだよ。人間が持つ感情の一つだ」

「僕、また少し人間に近付いた?」

「勿論、晴翔と居ると胸が高鳴るんだろう?それは立派な恋だ」

「胸が高鳴る。恋。うん、分かった。僕、晴翔に恋をしてるんだ」

「良かったな。勿論聖那を精一杯応援するよ」

「うん、お父さん、教えてくれてありがとう」



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