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小説という名の日記B(栞機能無し)
13

晴翔に話し掛けている聖那が、湖南に背を向けている。
だけどきっとにこにこと笑っているのだろう。
プログラムが学習した嬉しいという感情が、弾んだ声となって表れていた。

晴翔も聖那に抱きつかれる儘に、優しげな眼差しで聖那を見つめている。
あぁなんだ、さっきの湖南に向けた心配そうな眼差しは単なる表面的なものだったのか。
内緒と言った理由も、湖南への気遣いではなく聖那への戯れ。

晴翔も裕進と同じで大切なのはアンドロイド。
素直で可愛げのある聖那。

少しでも晴翔に気を許した自分が馬鹿らしい。
何だか此処に居るのも場違いな気がして、湖南は自分に与えられた部屋へ静かに戻った。
湖南を呼び止める晴翔の声がしたが、一切を無視して寝た振りをした。



そんな湖南の態度を怒るでもなく、晴翔が何時ものように湖南に話し掛けてくる。
気遣うような優しげな眼差しに、放っといてくれと言いたくなった。
毎晩入れてくれるホットミルクを礼も言わずに飲み干すだけ。
失礼な奴だと呆れればいいのに、晴翔は懲りもせず毎晩ホットミルクを作ってきた。

カップを片付けようと部屋を出た時、その会話が聞こえてきた。
風呂にでも行ったのだろう、晴翔は居ない。
其処に居るのは裕進と聖那。

今出て行ってはいけない。
何故だか分からないが、そんな気がした。
それは聖那に何時もと違う雰囲気を感じたからかもしれなかった。

こっそりと部屋に戻り、扉の隙間から会話に耳を傾ける。
盗み聞きだと分かっていたが、止めようとは思わなかった。



「ねえ、お父さん。僕を修理して」

「急にどうしたんだ?何処か変なのかい?」

「うん、何だか此の辺りがちくってするんだ。ね?おかしいでしょ」

扉の隙間から見える聖那は胸を押さえていた。
人間で言えば、心臓のある辺りだった。
二人の会話は本当によく聞こえた。
ちょうど二人の姿も見える位置だった。

暫く聖那を眺めていた裕進が、聖那に一つずつ問い掛けていく。
落ち着いた声で症状の一つ一つを確かめていた。



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あきゅろす。
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