小説という名の日記B(栞機能無し)
12
「良かった。これからは機械じゃなくて俺が作ってやる」
「あっそう、まぁ期待しないどく」
「機械より俺の作った方が美味いって言わせてやるよ」
「さぁどうだろう、それは実際作ってから言ってよね」
「まぁ任せとけ。湖南の為に頑張るさ」
何だか言葉を交わすのが苦ではない。
憎まれ口を叩いてものほほんと受け止められ、反対に湖南の方が気が抜けてくる。
不快でないならまぁどうでもいいか。と思ったその時、晴翔ではない声が割り込んだ。
「ねえ、何の話をしてるの?」
裕進と親子の語らいを楽しんでいた聖那が、何時の間にか寄ってきていた。
笑顔を浮かべて晴翔に話し掛けている。
無邪気なアンドロイドの笑顔に、「内緒」と晴翔が悪戯に微笑んだ。
内緒にする内容でもなかったのに何だかほっとした。
母親の思い出に繋がるものに触れて欲しくない。
きっとそれは聖那だからだろう。
裕進に愛され成長するアンドロイド。
湖南はホットミルクの入ったカップを、両手で強く握り締めた。
「僕だけ除け者?」
「そうじゃない。聖那を除け者にする訳ないだろ」
「だって僕に教えてくれない」
「仕方ないだろ。食べ物の好き嫌いの話だったんだから」
「そっか、それじゃ僕には分からないね。僕、何も食べた事ないもん」
「聖那もちゃんと定期的にエネルギー補充してるだろ。だから毎日元気な聖那が居るんだ」
「僕が元気だと晴翔は嬉しい?」
「勿論、聖那は元気なのが一番だ」
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