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小説という名の日記B(栞機能無し)
9

「その人は何で・・・?」

「事故でね、俺も詳しくは知らないんだ。事故で突然亡くなったって事しか知らない」

「事故・・・」

「聖那にもそう教えてあるんだ。お前のお母さんは若くて綺麗な内に亡くなったんだって」

聖那の顔はその女性に似ているらしい。
そっくりにするとその人の身代わりにしてしまいそうだから、、顔を少し似せて裕進さんとその人の息子として聖那を作ったって。



何だか気分が悪くなってきた。
スープがまだ半分残っているがこれ以上喉を通りそうもない。
スプーンをトレイに置いて、ご馳走様と晴翔に返した。

「もう腹一杯?あと少しだけでも食べないか?」

病人への親切心か。もしそうなら馬鹿馬鹿しい。
誰とも口を聞きたくない。口を開きたくない。
黙って首を振り体を横たえた。

布団を被り晴翔に背を向ける。
暫く晴翔は其処にいた。
背後に気配を感じる。
なかなか去ろうとしない気配に、早く出て行けと念じた。

「おやすみ」

軈て小さな声がして、背後の気配はなくなった。



別に此処で暮らしたいとか考えていた訳ではない。
何かを期待していた訳でもない。
けれど結果としては、此処で湖南も暮らすようになった。

聖那がお早うと声を掛けてくる。
今日は動ける?
昨日までベッドに寝たきりの状態だったから、聖那が湖南の体調を確認してきた。

じゃあ僕と遊ぼう。
頷くと早速聖那が誘ってくる。

湖南が此処を去る可能性。聖那にはそれを考える事が出来ないのだろう。
善意だけを与えられてきたアンドロイドは、自分の欲求に忠実だった。
湖南にとってもそれは都合が良く、聖那の誘いに嫌がる素振りを見せずに頷いた。



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