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小説という名の日記B(栞機能無し)
7

「聖那は確かにアンドロイドだけど素直だろ?嬉しい時は嬉しそうにするし、楽しい時は楽しそうにする」

「裕進さんって天才なんですね。ところで聖那は裕進さんがお父さんなんだって言ってました」

「そうだよ、そう学習させてあるからね。裕進さんは本当に凄いよ」

スープを少し掬ってはゆっくりと飲み込んでいく。
時間が掛かっているのにそれを咎める訳でもなく、湖南が食べる様を晴翔がのんびりと眺めていた。



「じゃあお母さんってどんな人になるんですか」

「裕進さんが愛してた女性だよ」

「それはどんな人なんですか」

「うーん、俺の口から言っていい事じゃないと思う」

決して棘のある言い方ではなかった。
ただ裕進の個人的な感情を表すものだからとの配慮があっただけ。

「じゃあいいです。貴方からは聞きません。聖那に直接聞く事にします」

この男が教えられないと言うのなら、この男に教えて貰おうと思わない。
見切りを付けると、晴翔が困ったように眉を下げた。



「あー、聖那は何も思わず答えてしまうからな」

思案げなその顔を湖南は無視した。
この男は裕進の助手。裕進の仕事をずっと手伝ってきた。
湖南とは何の関係もない。この男が困ろうがどうしようがどうでもよかった。

「あ、そうだ」

不意に晴翔が湖南を見た。

「湖南、俺の事は名前で呼んで」

は?いきなり何なんだ。
この男は馬鹿じゃないのか。
仕事のし過ぎで馬鹿になったってやつなのか。
今、此処で名前を呼ばせる意味が分からない。

「そしたら聖那のお母さんのこと教えてあげる」



揶揄われているのだろう。
にこりとした微笑に裏があるように思えてならない。

「何故貴方の名前を呼ばないといけないんですか」

だって此処で暫く暮らすでしょ。だったら名前で呼んで貰いたい。
睨みつけると、のほほんとした口振りで返された。

「それって聖那の為ですか」

此処で湖南が目覚めた時に聖那が言ってた事を思い出す。
今まで昼間は一人だったけどこれからは二人だと。
湖南が目覚めるまでの間に、裕進にも晴翔にも同じ事を言っていたのだと思った。



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