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小説という名の日記B(栞機能無し)
3

「あと、その晴翔って人にもお礼を言いたいんだけど」

「仕事が終わったら来るよ」

「終わってからこの山に登ってくるのか?」

「違う、此処が仕事する場所で、僕達が住んでる場所」

湖南はまだ此の部屋しか見てない。
だが此処は山奥。山から下りて買い物するのも一日掛かりになりそうな場所。
窓の外には見事なまでに緑しか見えない。
けれど仕事場と住居が一緒にあるのなら、建物自体は大きいのかもしれなかった。



それにしても一問一答では埒があかない。
一々質問するのが億劫になる。
仕事が終わるのが何時になるのかも分からない。
だったらさっさと情報を得て、此処が何処なのか確かめようと、聖那に説明を求めた。

説明と言うよりは聖那のお喋りタイムみたいなものだった。
湖南が何者かも知らないのに、警戒もせず無邪気にいろんな事を教えてくれた。



僕のお父さんが此処に研究所を建てたんだ。
此の家の隣に研究所があるんだよ。
それでね、お父さんの助手が晴翔で、晴翔も此処に住んでいる。
だから三人で住んでるんだ。
でもね、昼間は二人とも仕事で忙しいから僕一人なんだ。
だけど湖南が来てくれたから、これからは二人だね。
晴翔もお父さんも仕事が終わったら来るから紹介するね。
お父さんは裕進っていう名前で科学者なんだ。
お父さんは天才なんだって晴翔が言ってた。
僕を作るくらい頭が良いんだよ。



「ちょっと待って」

相槌を打ちながら聞いていたが、少し引っ掛かった点があって話を遮った。

「お父さんが君を作った?」

「うん、僕はアンドロイドなんだって」

お父さんって僕を作れるくらい頭が良いんだと、聖那がにこにこ笑っている。
それは産まれたという意味ではなく、言葉通り作ったという意味だった。

「でも君、笑ってるよね?」

「うん、僕の表情はファジープログラムで動くんだって」

単なる情報をそのまま話しているという様子で、聖那自身それ以上の疑問を持たないらしい。
表情の笑顔の種類が八種類あるんだって。
にこにこと笑うその顔は、その笑顔の中の一つだった。



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