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小説という名の日記B(栞機能無し)
2

全く見覚えのない場所で湖南は目を覚ました。
何故此処に?自分が倒れたのは確か山道だったのにと、今置かれている状況が把握出来ない。
だが柔らかなベッドに居るという事は、この山奥で偶然にも誰かに助けられたという事でしかなかった。

今居る場所の確認をしようと上半身を起こした時に、その声がした。

「あっ、起きた」

声と共に誰かが近寄ってくる。
こんにちは、と湖南の顔を覗き込んだのは、湖南と同じくらいの少年だった。
少なくとも湖南には少年に見えた。



「君は?」

どれくらい眠っていたのか分からないが、この少年が湖南を助けたのだとしたら礼を言わなければならない。
湖南の問いに、少年がにこりと微笑んだ。

「僕は聖那。貴方は?」

「僕は湖南と言う。君が僕を此処まで運んだの?」

「うん、僕が外で湖南を見つけたんだよ」

「君一人で僕を?」

見ず知らずの湖南に人見知りせず、はきはきと語り掛けてくる。
聖那という少年の身長は、湖南と同じくらいか湖南より若干低く見えた。
幾ら活発そうに見えても、湖南と同じくらいの体格で、湖南を抱えて歩けるようには見えなかった。



「ううん、運んだのは晴翔」

予想通り運んだのは別人だったが、晴翔とは誰だろうか。
今此の部屋には湖南と聖那しか居らず、知らない名前を当然のように出されても、晴翔?と訝しげに首を傾げざるを得なかった。

「晴翔はお父さんの助手。ずっとお父さんの仕事を手伝ってる」

「ふうん、取り敢えず助けてくれて有り難う」

仕事中だから居ないらしい。
晴翔という人物への礼は後回しにして、先に聖那に礼を言うと、どういたしましてと明るく返してきた。



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