小説という名の日記B(栞機能無し)
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読み:裕進(ゆうしん)・湖南(こな)・聖那(せな)・晴翔(はると)
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優しく温かだったママの声。
小さな頃の懐かしい記憶。
ねぇ湖南、あなたのパパはとても偉い人なのよ。
幼い頃に死んだママ。
今は聞けない懐かしい声。
パパはあなたがいることを知らないの。
だけどパパを恨まないでね。
ママが勝手に好きになって迫ったの。
パパに他に好きな人が居るのを承知で、ママが一度だけって迫ったの。
小さな子供に聞かせるにしては過激な内容。
子供の頭では理解の一つも出来なかったけれど、子守歌代わりに聞かされたパパの話は成長してからも覚えてた。
歩き疲れた山奥。
歩き慣れない道をひたすら歩いてきた。
休みも取らずに歩いてきた。
だけどそれも限界で何だか体がふらついた。
とうとう地面に座り込んだ。
ゆっくりと横になり目を閉じた。
思い出すのはママの声。
子守歌代わりのパパの話。
パパを大好きなママの感情は、優しかったけれど苦しかった。
温かだったけれど寂しかった。
苦しくて寂しい感情を持った儘、ママは亡くなった。
苦しくて寂しい。
人間だからそんな感情を持つ。
人間だから苦しい。
人間だから寂しい。
人間だから胸が痛くなる。
だけど機械なら。
機械ならそんな感情を持つ事はない。
機械になりたい。
機械になって感情を失くしたい。
そう望んだのは何時だったか。
今となっては古い記憶。
こんな時に思い出すのは何故だろう。
意識がぐらつき、感覚が途絶えた。
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