小説という名の日記B(栞機能無し)
13
これは。マトウは驚きました。
人間の亡骸。死後どのくらい経っているのでしょう。だいぶ白骨化が進んでいます。
誰だかも判別出来ません。
この亡骸は誰なんだろう。
まさかとは思います。
まさかウェイだというのでしょうか。
食料が尽きこんな所まで食料を求めて来たのでしょうか。
けれどもふと視界の隅に映ったものに、またもや違和感を覚えました。
岩山を挟んで直ぐ其処に横たわるもの。人間の形をしています。
腐敗はしているようですが、まだ誰だか分かる範疇です。
マトウは近付いてその死体を覗き込みました。
それはウェイでした。
冬だったからでしょう。腐敗はそれほど進んでいません。
ウェイの表情が判別出来ました。
手を伸ばし力尽きたウェイが、幸せそうに微笑んでいました。
その顔はとても幸せそうで、握り締めた掌に何かを持っていました。
大切そうに掴んでいるもの。それはきっとウェイの宝物の筈で。
マトウは掌をこじ開けてみました。
幸せそうにウェイが掴んでいたもの。
死して尚放さなかったもの。
最期までウェイが掴んでいた、それは。
何の変哲もない小さな石塊でした。
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