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小説という名の日記B(栞機能無し)
12

ウェイは最後に渾身の力を込めて手を伸ばしました。
手を伸ばしたけれど、それ以上は手が動きません。
精も根も尽き果てて、とうとう指先が地面を掻きました。
その時です。何かが指に触れました。

これは、この固さは。
目が霞んで掴んだものが見えないけれど。
ああ、漸く見つけた。
ぼんやりと喜びが沸き起こります。
やっとだ、やっとで手に入れた。
朦朧とした意識の中で、肩の力が抜けていきます。

この固さはダイヤモンドだ。
とうとう手に入れた。
とうとうダイヤモンドを手に入れたんだ。
遠ざかる意識の中、手に触れたものを確りと握り締めました。
弱まっていく呼吸。ウェイは幸せを感じながら微笑みました。



氷が溶けマトウがやって来ました。
氷が張る前に戻ってきてくださいと言ったのに戻って来なかったウェイを心配してやって来ました。

冬を乗り越える程の食料はなかった筈です。
あれほど念を押したのですから、戻ってくるとばかり思っていました。
それなのに戻って来ず、氷が張って山が通れなくなりました。
援助を断った罪悪感からと言っても、ウェイは好意でタミルの家を管理してくれているのです。
口を酸っぱくして言った心算でしたが、もっと強く戻ってくるように言えば、隔離された場所に取り残すような事にはならなかったと、マトウは後悔しました。
氷が張っている間、ウェイが心配でたまりませんでした。
だからマトウは氷が溶け山が通れるようになった途端直ぐに、ウェイの様子を確かめにいきました。



タミルの家には誰もいませんでした。
懸念していた通り、食料も尽きていました。
全く人気を感じない家でした。

マトウはウェイを探しに外に出ました。
あちこちを虱潰しに探しました。
きょろきょろと目に付く範囲を探しては移動し、また次の場所を探します。
気が付けばだいぶ遠くまで来ていました。

こんな所までウェイが来る訳がないか。マトウが引き返そうとした時です。
岩山の陰。何か目に映ったものがありました。
岩でもない、石でもない。動いてもない。だけどそこにある違和感。
マトウはその何かに近付いていきました。



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あきゅろす。
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