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小説という名の日記A(栞機能無し)
25



掌の上、小さな紙切れ。
端だけ残った断片。

大切だった宝物。
大事に取っておいた写真。

断片となったものにはもう何が写っていたかも分からない。



幼い頃。
あれは小学二年の時。
まだ両親が離婚していなかった頃。
だけど今思えば少しずつその兆しが見え始めていた頃。



夏休みに馳矢が父方の田舎に旅行すると言う。
親に送って貰い暫く滞在し、また帰りには両親が迎えに来てくれる。
その旅行に侑久も誘われ、一緒に車で連れて行って貰った。

その頃はまだ仲の良い友達だった。



旅行の初日の写真。
まだ馳矢の額に傷はなかった。

侑久が初めての旅行だというので、馳矢の父親が馳矢と二人並んだ写真を撮ってくれた。

大切な思い出の写真。
額に傷がない馳矢の写真。

額の傷は侑久を庇って出来たものだった。



馳矢の父方の田舎は緑に囲まれていた。
山から切り採った木を置いてある敷地もあった。
其処は侑久と馳矢のお気に入りで、その材木置き場で二人はよく遊んだ。

毎日外で遊び回る二人は近所の子供達の間でも評判となった。
都会から来た二人。
自分達と違う異質な言葉。
小学生達は物珍しさで遠巻きに二人を眺めていた。

だが中学生達には都会から来た二人が生意気に見えた。
格好をつけている都会の子供。
自分達を田舎者だと馬鹿にしているかのように異質な言葉で遊び回る子供。
それが気に食わず、中学生達は二人に出会う度に、悪意をもって揶揄った。



馳矢も侑久も、悪意を向けてくる中学生に良い感情は持たなかった。
だから直ぐ喧嘩になる。
体格でも力でも中学生には叶わない。

喧嘩と言っても、大きな殴り合いにまでは発展しなかった。
中学生が手を出すと言っても軽く小突く程度。
立ち向かってくる二人をあっさりと躱しては、自分達の矜持を満足させていた。





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あきゅろす。
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