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小説という名の日記A(栞機能無し)
12



「偏見はありません。けど俺はホモじゃないです。勝手に決めつけないで下さい」

「ホモじゃない?んなこた別にどうでもいいんだよ。その態度がさぁ、如何にも偏見ありますって訴えてんだよ」

「でも・・・」

つい言い淀んだ。



今まで考えたこともなかった。
男同士の恋愛。
考えたこともなかった。

智之にとって恋愛と言えば女性が対象で、男性が対象になる可能性を思い付きもしなかった。

同性愛者が存在しているのは知っている。
だがそれはこの世の何処かでってことで、全くの他人事だった。

「何でそんなこと聞くんですか?」

何だか見透かされた気になり、また言い放つ。
だがその声には若干の気まずさが含まれていた。



「ん?何でってさぁ、これ、何だと思う?」

そう言って侑久は何かをポケットから取り出す。

よく見れば縦に破かれた写真。
裏しか見えなくて何の写真かは分からない。
鋏やカッターで縦に切ったのではなく、明らかに引き破られた写真。

だがそれを今見せられても、話が見えてこない。



「写真ですよね?それと何の関係が?」

「これさぁ、俺の恋人の写真なんだよな。でもその恋人とはもう二度と会えないんだ。だからこの写真を両手で大事に持ちながら、眺めて思い出に浸ってたんだ。そしたら、誰かさんがいきなりタックルしてきて、倒された拍子に破れちゃいました、と」

「えっ・・・」



自分の仕出かした過ちに、思わず智之が青褪める。

気付かなかったけど、大切な写真を持っていたのか。
理由は知らないが二度と会えない恋人の写真を。

自分の注意力散漫により、引き裂かれた写真。
漸く事の重大さに気付いた。


ごめんなさい。
申し訳なくて心から謝ろうとした智之に、侑久が更に言葉を連ねる。

「で、その恋人ってのが男だったんだよな」

吃驚して侑久を見詰めた。

「だからさぁ、さっきのが許せないっつー訳」

侑久の目は真っ直ぐに智之を睨んでいた。





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