小説という名の日記A(栞機能無し)
37
手痛い拒絶。
不安だろうに、縋りつく手は残酷に振り払われる。
その声が噎び泣きへと変わる。
「湧斗、ごめんな。湧斗が俺のことを好きなのは知っていた。だけど俺はお前のこと、何とも思わないんだ」
泣きながらも、聞いてはいるのだろう。
「何で?俺の体だよ?なのに何で俺じゃなくてあいつなの?何も違わないじゃないか。だったら俺を好きになってよ」
それはない。
湧斗とフアルは違う。
肉体は同じでも、絶対に違う。
「湧斗、俺なんか早く嫌いになれ。俺はお前を好きにはならない。俺が好きなのはフアルだけだ」
繰り返される残酷な言葉。
断ち切るように保険室の扉が開く。
「ごめんね。変わりはなかった?」
丁度戻ってきた保険医が、心配そうに覗き込む。
まだ休み時間には早い。
だが残りの授業を受けるにも中途半端な時間。
それでも俺は、保険医に湧斗を任せて教室に戻った。
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