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小説という名の日記A(栞機能無し)
13



一日中くたばっていた所為だろう。
あれだけ高かった熱も、今は平熱に下がっている。

覚えてないが、変な夢を見た気がする。
どんな夢だったかは全く覚えてない。
ただ必死だったのだけは覚えている。



健康になった俺の体が、早速空腹を訴えてきた。

台所を見ると粥がまだ残っている。
手応えがあるものが食べたいと棚をあせれば食パンがあった。

パンを焼きバターを付けて齧り付く。
牛乳で流しこみながら朝食を終えた。



この分だと学校に行っても問題はない。
寧ろ寝ていた方が退屈でどうにかなりそうだ。

昨日の弱りきった俺はもう何処にも居ない。
と言うか、あれは自分でも何かの間違いだと思いたい。



湧斗が来たのは覚えている。
俺が眠るまで、途方もないお伽話をしてくれたのも覚えている。

だがそれは別にいい。
湧斗が見舞いに来ただけのこと。
話をしろと言った俺の言葉を受け、話をしただけのこと。

それよりも、帰ろうとした湧斗を引き止めたことの方が問題だった。
人間、病気になると、ああも心が弱るものかと思い知らされた。



学校に着いたら湧斗に見舞いに来てくれた礼を言わなくてはならない。

うざいだろうな。
出来れば違和感のある湧斗に話しかけたい。
静かな湧斗ならば、俺も素直に礼が言えるんだが。

だが登校してきた俺に駆け寄ってきたのは、いつもの湧斗だった。



「風邪治ったんだね。俺、心配したんだよ」

「ああ、一日寝たら見事に治った」

「じゃあもう具合は悪くない?」

「もう大丈夫だ」

にこにこと笑う湧斗に一つ一つ答えていく。

「良かった。今日も休みだったら、俺お見舞いに行こうって思ってたんだ」



湧斗から見舞いという単語が出て思い出した。

そう言えばまだ昨日の礼を言ってない。
早めに済ませてしまおう。

「昨日はありがとな」

だが主語がなかった所為だろうか。
何のことか分からないと湧斗が首を傾げる。





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