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小説という名の日記A(栞機能無し)
8



そんなに柔な体をしている訳じゃないが風邪をひいた。
咳も出るが熱が酷い。

三十九度近い熱を出して学校を休んだ。

病気になると心も弱くなるのは俺も例外ではない。
抱き枕があれば抱いて寝れるくらいには弱っている。



解熱剤を飲んで一日ベッドの中で過ごす。
少し寝ては目を覚まし、また少し寝ては目を覚ます。
安心できる温もりがほしい。

柄にもないことを思った。



母親が用意してくれた粥を温め直しそれを食べる。
食欲がなく、少し食べて薬を飲んだ。

食事以外でベッドから出るのは、トイレに行くときくらいだった。



昼間これだけ寝たから、夕方には目が覚めた。
目が覚めたからと言っても気力がない。

しんどい。
動きたくない。

何もする気にはなれず、ベッドの中で目を閉じていた。



ノックもなしに突然開いた扉。
母親が早く帰ってきたのか。
妹が帰ってきたのか。
二人ともノックはするんだが。

目を開けて無礼な訪問者を見る。



訪問者は湧斗だった。

ノックしてから開けろ。
声を出すのもしんどかったが、そう咎めれば「分かった」と頷く。

この雰囲気は違和感のある湧斗の方だ。



最近では違和感のある湧斗にも慣れた。
違和感のある湧斗の方が傍に居て落ち着く。

だから違和感のある湧斗という言い方はおかしいのかもしれない。
他に言いようがないから心の中でそう呼んでいるだけで、実際はどっちも湧斗と呼んでいる。

この弱った状態で現れたのが違和感のある湧斗だったことにほっとした。
きっといつもの湧斗なら、枕元であれこれ煩く世話を焼くに違いない。
それは今の俺にとって迷惑にしかならないのだから。



「飲んで」

いきなりペットボトルを突きつけられた。

体を起こすのが怠いが、湧斗が突きつけた儘の姿勢で動かなかったから、ゆっくり体を起こしてそれを飲む。
発汗で水分を失った体に染み込んでいく気がする。

だが全部は飲みきれなくて、半分以上残して湧斗に渡した。





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