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小説という名の日記A(栞機能無し)
34



玄関の開く音。
春臣さんが帰ってきた。

今日はいつもよりだいぶ早い。
まだ夕食の支度もしてない。

慌てて台所に行くと、玄関から声が聞こえてきた。

春臣さんではない声。
第三者。
だけど春臣さんと話すその声は、聞き覚えのある声だった。



「そこに座って。何か飲み物でも用意させよう」

春臣さんに促されリビングへ通されたのは、もう二度と会いたくない人物だった。

「幸広、コーヒー持ってきて」

「幸広!良かった。無事なんだな」



春臣さんに被せるように僕に話しかけてきた水上を無視し、インスタントコーヒーを入れる。

何で水上が?
何をしに?
どうして家を知った?

幾つもの疑問がわき上がり、それが全部不安に繋がっていく。

急いでコーヒーを三人分入れ、リビングに持っていった。




「まぁ落ち着いて。コーヒーが来てからでもいいじゃないか」

水上が食ってかかっていたのだろう。
春臣さんのあしらう声がする。

テーブルを挟んで対峙していた二人の前にカップを起き、僕の分は春臣さんの隣に置く。
トレイをテーブルに立て掛け、春臣さんの隣に座った。



「さて、君がさっき言ってたことだけど、俺が幸広を無理矢理家から出さないようにしてる、だったかな」

「してるでしょう!じゃなきゃ何で」

「ちょっと待って」



こんな時でさえ僕は喋れない。
春臣さんが僕に話しかけてこないという事は、そういう事だ。

攻撃的な水上を制し、春臣さんが口を開く。

「今、君は幸広を見て、それでも無理矢理と言うのかな。鎖が付いている訳でもない。縛り付けている訳でもない。自由に家の中を動き回っているよね。外に出て行こうと思えば、いつでも出て行ける状態なんだよ。これの何処が無理矢理なのかな」



そんな事を言ったのか。
本当に水上は余計なことばかり。
僕は僕の意思で家の中にずっと居るのに。

「それは・・・、でも。あっ、幸広を脅してるんでしょ」

はっ、水上の勝手な妄想。
勝手に僕を心配して、勝手に虐待されてると決め付けて。
全部水上の独り善がり。





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あきゅろす。
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