小説という名の日記A(栞機能無し)
2
可愛かった弟は成長するに連れ、男となる。
顔は整っていて性格も優しいままだが、すらりと伸びた背は、もう子供とは呼べない。
疑うことを知らず成長した弟は、依然、株の利益で暮らしてると思ってるし、俺のしていることも知らない。
この体で一体幾ら稼いでるか、思いつきもしないだろう。
何も知らない弟は、何も知らないままでいい。
何よりも大切な弟。
お前のその綺麗な部分に、俺は何度も救われている。
お前だけは汚してはならないと、そう思えるほどに。
だから弟が恋愛相談してきた時に、俺は弟の『これから』を考えた。
年上の女性が好きになったという。
高校生の弟と社会人の女性。
弟が本気で好きになった女性。
弟が本気で好きになるほどの女性。
だからこそその女性は、弟との交際を真剣に悩んでいた。
その女性なら弟を安心して任せられる。
俺は合間を見て、弟とその女性との交際に奔走した。
弟とその女性の交際に気づいた父は、弟を誑かす女だと反対した。
高校生の若い男に色目を使う女だと罵る。
付き合うなら同年代の女の子にしなさいと、父は弟を真っ当な道に戻そうとする。
父に反対された二人を、俺は俺の持論で励まし説得した。
もう直ぐ弟は高校を卒業する。
卒業後は大学進学が決まっている。
同じ学生でも、高校生と大学生ではその責任も違う。
高校を卒業すれば、弟は家を出て彼女と暮らす。
俺が二人をそう説得した。
学費のことは心配するなと。
大学を卒業するまで父とは連絡をとるなと。
何度も根気強く説得を重ね、弟は躊躇いながらも漸く納得してくれた。
学費はバイトをして稼ぐよ。
駆け落ちのつもりはないけど、父さんとは暫く距離を置くよ。
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