[携帯モード] [URL送信]

「鈍感って・・・。確かに鈍感だよな」

「は？」

気の抜けた声が出た。

「だってさ、あれって完全に愛弓の焼き餅でしょ。なのに友達だから俺を優先するとか、愛弓も可哀想」

少しも可哀想と思ってないような口調で「可哀想」と口にする。
それは矢張り愛弓が圭史を嫌ってるように、圭史も愛弓を嫌ってるということか。



それにしても焼き餅？
独占欲というやつ？

将生自身が感じたことがないから分からない。
相手を縛り付けたいとは思わないし、相手の交友関係に口を挟む気はない。
だから鈍感と言われるのだろうか。



「何も言い返さないんだ？」

圭史の声で、意識が元に戻る。

「あっ、一人の世界に旅立ってた」

つい正直に言えば、ぷっと圭史が吹き出した。

「ちょっ、一人の世界って。変な奴」



そこで漸く釈然としないまま引っ掛かっていたことを思い出した。

「そう言えば圭史、えと、その、愛弓が言ってたことって、その・・・、本当なのか？」

「何？ホモってこと？」

人が頑張って言葉を探したのに、いとも簡単に一言で返してくる。



「まぁ、そうなんだけど・・・。いや、もしそうだとしても偏見はないよ？でも本当なのか分かんないし。いや、だから誤解しないでほしいんだけど・・・」

反対に将生の方が落ち着かなくなる。
しどろもどろで、自分でも何を言ってるのか分からなくなってくる。



焦る将生を見ていた圭史が、また吹き出した。

「いいよ。教えてあげる。でも流石に此処で話せるような話じゃないしね。家、来る？家ならゆっくり話せるから」

圭史の家。
行ったことがない。
行ってみたい。

他人の事情に首を突っ込むタイプではなかったんだが、と自分でも思うが、そうでもなかったらしい。
本当のことが知りたいと思う。