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小説という名の日記A(栞機能無し)
7



寝る間を惜しんで働いても、何人に抱かれても、金は目に見えてなくなっていく。

蓄積された疲労と不摂生。

全身の倦怠感に腹部の不快感。
体にもその変化は現れる。

それでも柊は金を稼ぐために働く。
働いて得た金は、ほぼ全て樹琉の為に使われる。



電話で呼び出され、指定された場所に着く。

目の前で交わされる口づけ。
樹琉の隣にはいつも違う女。

正面から女を抱き締めて耳元で何かを囁く。

やだぁ、こんなとこでぇ。
凍てついた視線で見下ろす樹琉を、頬を染め俯く女は気づかない。



「樹琉」

柊の声に、女を抱き締めたままの樹琉が笑顔を向ける。

「有紀ちゃんが誕生日なんだって。だからほら、そこのそれ買ってあげようと思って」

樹琉が指差した先、ショーウィンドーのピアス。
タグには八万九千円。

財布から取り出した十万を受け取り、女を伴った樹琉がジュエリーショップの入口を潜る。



女の耳にピアスを当て、樹琉が何かを言っている。

似合ってるよ。
紡がれた言葉はきっとそう。

硝子越し、柊へと視線を向けた樹琉の唇が音を出さずに言葉を象る。

柊、愛してる。

俺も樹琉を愛してるよ。

またね。

うん、またね。



何も気づかない女が、樹琉に話しかける。
女に視線を戻したのを見届け、柊は金を稼ぎにいく。

一日が終わった頃には、重い体が益々重くなっている。

















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あきゅろす。
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