小説という名の日記A(栞機能無し)
4
「今から出ておいで」
柊の携帯に掛かってきた電話。
甘い声が耳元で囁く。
言われた場所に行ってみれば、女連れの樹琉が居た。
「柊、ホテル代ちょうだい」
にこりと樹琉が笑いかける。
その隣には、樹琉に腕を絡ませ撓垂れ掛かる女。
「ホテル代くらい私が出すのに」
「いいの、今日は美菜さんの誕生日でしょ。それくらい俺にプレゼントさせてよ。ね?」
甘い笑顔を女に向ける。
「幾ら?」
「五万。あっ、やっぱり十万でいいや」
言われた通りの金額を財布から取り出す。
金を手にした樹琉が、目を細めて蕩けるような音色で告げる。
「ありがと。柊、愛してるよ」
「俺も樹琉を愛してる」
熱に浮かされたような眼差し。
そんな樹琉の眼差しに女は気づかない。
「樹琉ぅ、幾ら金蔓でも私の前で言っちゃ駄目よ」
「ごめんね、美菜さん。それじゃあ行こうか」
女の腰に手を回し、樹琉が背中を向ける。
女に見つからないように、片手をあげる。
ひらひらと振られる掌。
またね。
見送る柊に向けたものだった。
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