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小説という名の日記A(栞機能無し)
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「僕はね・・・、僕の事なら智行は気にしなくていいんだよ。本当に幾らでも待てるんだ。だから智行が本気で僕に抱かれたいと思ってくれた時に抱きたい」

怯えさせないように萎縮しないように、なるべく穏やかに達朗が言葉を紡ぐ。

智行は胸が痛くなって助手席の窓の外を眺めた。



達朗があの女の兄である限り、智行から抱いてと言うことは絶対にない。

それでも待てると言うのだろうか。
何も知らないから言える言葉。

そこまで想って貰える程の事をした覚えはない。
なのにいつまで待つと言うのだろう。

せめてあの女の兄でないなら・・・。



自分の考えていた事に、はたと気づく。

あの女の兄でないなら?
あの女の兄でないなら何だと言うのだろう。

眠れずに意識が集中していた背中。
もし昨夜達朗が体を求めてきていたら、自分は拒めていただろうか。

ふと思い当たった考えに狼狽えた。



家に辿り着き部屋のベッドに体を投げ出す。

ぐるぐると気持ち悪い。
寝不足と訳の分からない感情に押し潰されそうになる。

夜から仕事だ。
何も考えるな。

自分自身に命令して、布団を頭から被る。
光を遮断した暗闇の中で、漸く眠りに墜ちていった。


















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あきゅろす。
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