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小説という名の日記A(栞機能無し)
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琴音という名の妹を思い出す時、苛々が抑えきれなくなる。
一言も口を利かず黙々とご飯を食べれば、達朗が心配そうに窺ってくる。

夕食を食べ終え用はないとばかりに立ち上がれば、必死で引き留めてくる。

「僕が何かしたなら謝るよ。だからもう少しゆっくりしていって」

優しい優しいお人好し。
大の大人が機嫌を取るさまに、溜飲が下がる事もよくあった。



事態は思い通りの方向へ進む。

「はい、これ」

渡された物は真新しい携帯。

「携帯が何?」

訝しげに問うと、「使って」と微笑まれる。



「俺、携帯代払えないよ」

「僕の名義で僕が払うから大丈夫。それより携帯は持ってないと不便でしょ。それにやっぱり僕が心配なんだ」

解約した当初は不便だと感じたが、今は必要性を感じない。
仕事先への連絡は公衆電話があるし、仕事先からの連絡はネカフェが取り次いでくれる。



肝心な点は、仲が良いだけで携帯をあげれるものなのかということ。
心配だからと言って、家族でもない人間に携帯をやれるものなのか。

これは智行に依存してきている証拠なのだろうか。

ならば、と思う。
ならばこれは貰っておこう。
智行には痛くも痒くもない。

どうせ支払いは達朗だ。

「それじゃあ使うよ」

ありがとうも言わずに受け取ったのに、達朗は嬉しそうだった。

















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あきゅろす。
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