紘也はふらふらと当てもなく歩いた。
当てもなく歩いていたのに、気が付けば見覚えのある場所で、ある建物を見上げていた。
何でこんなとこに、と情けなくなる。
紘也の突っ立っている場所は、聖のマンションの裏。
見上げているのは聖の部屋と思われる窓。
窓から漏れる灯りに、泣き出したい気持ちになった。
こんな時でも求めるものは聖なのか。
いいところなんか一つもないのに、拒絶されてばかりなのに、自棄になってもまだ聖を求めているのか。
裕二を愛した圭吾。
聖を愛した紘也。
聖は裕二の子供で、紘也は圭吾の子供。
紘也が聖を愛したのは遺伝なのだろうか。
圭吾の血が流れてるから、紘也も聖を求めているのだろうか。
裕二の息子である聖を求めているのだろうか。
自分でも理屈のつかない感情が押し寄せる。
圭吾のように聖を強引に連れ去る事も出来ない。
こうして建物の外から見ているしか出来ない。
拒絶されていても此処に居れば聖を感じる事ができる気がする。
人気のない場所でひたすらぼんやりと窓を眺めていた。