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小説という名の日記A(栞機能無し)
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母は紘也が物心つく前に亡くなったのだと、そう父から聞かされていた。
だから高瀬家は男だけの世帯だった。

父、高瀬圭吾を筆頭に、兄、宗輔と紘也、それと祐二の四人家族。
だが祐二の名字は高瀬ではなかった。

山内祐二。
圭吾の恋人である祐二は、紘也が物心つく時から一緒に暮らしていた。



父親の恋人が男であるということに、紘也は嫌悪感を抱いた事がない。
寧ろ堂々と祐二を愛していると宣言する父親に、誇りを持っていた。

それは圭吾の教育の賜物だろう。
幸せそうな二人を見ていると、世間の偏見が下らなく思えた。



三歳違いの兄、宗輔も今ではこの家庭環境を受け入れている。

最初は複雑だったと何かの折りに紘也に漏らしたが、紘也が理由を問うても教えてはくれなかった。
県外の大学に進学し時々帰省するだけとなった今も、宗輔はその理由を紘也に教えてくれない。

紘也の記憶にある限り、宗輔が圭吾や祐二と諍いを起こした事などないから、理由と言っても些細なことに違いなかった。



紘也自身は、同性愛者ではないと思う。
女の裸を見れば勃ったし、初体験も女と済ませた。

だが高校に進学して、同性愛者ではないが異性愛者でもないと気付いた。
今でも女の裸を見れば勃つから、両性愛者なのだろう。

高校に入学し、好きになった相手は男だった。



山内聖。
同じクラスの彼は、紘也より拳一つ分背が低い。

どこを好きになったのだろう。
同じクラスとは言え、別の中学出身で友人も違うし、座席も遠い。
接点のない彼を好きになったのは、入学当日教室の扉付近で不意にぶつかった時だった。



悪いと謝った紘也に、「こっちこそごめん」と謝った後、紘也を見て大きく目を見開いた。
何?と聞いたが、「何でもない」とそそくさと離れていく聖が気になり、いつしか彼ばかりを目で追うようになった。





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