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小説という名の日記A(栞機能無し)
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まず隼は住民票を征汰の住所に登録した。
会社勤めしていた頃の住所では住民票が抹消されていて、所謂住所不定だった。

だがこれで住所が定まった。



履歴書も買って求人誌も買った。

アルバイトでスーツ代を稼ぎたい。
取り敢えずは一着だが、余裕があれば四着買っておきたい。

求人誌を捲りながら、朝八時くらいから働ける職場を探す。
定職に就くまでは征汰と居られる時間を増やしたかった。



めぼしいページを折り曲げ、最終的に駅前のカフェに面接に行く事にした。

八時から十三時の五時間。
仕事中や通勤中に寄る客が多く、シフトはいろいろあったが、隼は八時からを選んだ。



面接の次の日から早速働く事になった。

征汰にそれを伝えると、何だかよく分からない複雑な顔をしていた。
少し訝しく思ったが、久々の社会生活に緊張していた為、意識は直ぐに明日からの生活に飛んだ。



仕事が終わり帰っても、十分征汰を迎える時間がある。
今直ぐに生活が変わる訳じゃないから、いざ働いたら征汰も隼が働く事に慣れてくれるだろう。

ゆっくりとした変化の中で、二人で暮らしていく道を見つけていければいいと思った。



隼自身、手持ちの金が減っていく。
面接の日がちょうどその職場の給料日だったから、隼が初めて貰える給料は一ヶ月後になる。
それまでにどうしても買いたい物があり、その分は絶対取って置かなくてはならない。

働き始めて昼も腹が減るようになったが、所持金を考え、パンを買って昼飯を済ませた。



カフェという接客業は人との関わりが苦手な隼に勤まるか不安だったが、存外抵抗なく働けた。

人に体を触られる事もない。
高校卒業後に入ったあの会社の、あの上司が特殊だったんじゃないかと思うようになってきた。



家に帰り洗濯があれば洗濯を済ませる。
部屋が散らかっていれば片付ける。
掃除機も週に一度かけた。

最近では征汰が鍵を掛け忘れる事もあまりなくなった。
完全になくなった訳ではないが、そのたびに隼は征汰に鍵を掛けるように言った。





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