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小説という名の日記A(栞機能無し)
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掃除をしていて見つけた物がある。

その辺に放り出されていた征汰の給料明細。
八時から十五時、休憩を除き計六時間の時給。
週休二日制。

保険代など引かれ、手取り九万弱。
征汰の給料は決して高くはないと言った井手の言葉を思い出した。



そこから家賃や光熱費を引けばどれくらい手元に残るのか。
それに毎月の食費もある。

数字を目にして、一人暮らしは厳しいと井手が言った意味が初めて分かった。



文句一つ言わない征汰。
それどころかあの給料で隼の面倒を見る気でいた。

一人で暮らすのも厳しい給料。
それなのに隼の分まで嬉しそうに料理を作っていた。

手の込んだ物は蛯名フライとエビマヨだけ。
給料日はそれを作る日だと決めているらしい。

後は端から見たら炒めるだけの料理。
だけど征汰にとって精一杯の料理。

何だか胸が詰まった。



丁寧に明細書を畳んで、押し入れの空いた小さなスペースに置く。

これから此処に毎月重ねていこう。
征汰が働いて稼いだ給料。

征汰にとっては意味のないものでも、隼にとっては十分に意味があった。

















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あきゅろす。
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