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小説という名の日記A(栞機能無し)
25



突然剣を抜き自らの胸を突き刺そうとする男を咄嗟に止めた。
振り払う腕に何度も「止めて」としがみついた。

それを繰り返すうちに、軈て男は動かなくなった。
小さく唇だけを動かし、じっと項垂れていた。

何と言っているのか分からない。
けれどもラキはその姿を見てはいられなかった。

虚ろな眼差しの男の腕を引っ張り、ラキの家へと連れ帰った。
男は全く抵抗もなく、ただぼんやりとついてきた。



似顔絵を目にした時、その男だと直ぐにラキは気付いた。

サージベル王国ヌド王毒殺の罪人ソルア王子。

確か炎で身を焼いた人物もソルア王子だと名乗ったという。
王国の指輪を高く掲げて見せたという。
自ら炎で身を焼いたという。

その最期を聞いた男は泣いていた。
悲痛な声で男は誰かの名を呟いていた。

ラキには「アルカ」が誰であるか分かった。



それと同時にラキは手配書を引き裂いた。
男がソルア王子であると証明できるもの。
ソルア王子と「アルカ」の為に、ラキは町中のそれを引き裂いて回った。

この紙に書かれている事は真実ではない。
ソルア王子の慟哭を見ていたら分かる。
「アルカ」と涙を流したソルア王子を見ていたら分かる。



ソルア王子にとって「アルカ」はきっと大切な人。
身代わりになってまで「アルカ」は何をしたかったのか。

そう考えた時、ラキは決心した。

ソルア王子を匿おう。
「アルカ」の為に。
延いてはこの国の為に。



ソルア王子が生きていることを知っているのは、ラキだけの筈だった。
それでは噂は誰が流したのだろう。
まさかラキの家に王子が居ると知っている者が居るのではないか。

だがソルア王子はあの頃の手配書と風貌が変わっている。
身形を整えれば元の精悍な顔になるが、今のソルアは一目見ただけでは王子とは分からない筈。

人前では名前も「ソル」と呼んでいる。
だからソルア王子だと誰も気付かない筈。

そう思ってはいるが、噂を耳にする度ラキは動揺せずにはいられなかった。





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あきゅろす。
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