小説という名の日記A(栞機能無し)
13
手放してはいけないものをあっさりとアルカに手渡す。
「これは俺だからな。俺とお前はいつでも一緒だ」
アルカは思わず「駄目だ」と言いそうになった。
いつもなら言っていただろう。
それはソルアが身につけるべきものだと。
絶対にソルアが持っていなくてはならないものだと。
今までどんな事があっても外さなかったじゃないか。
今だってそう口を突いて出そうになった。
何故に今このタイミングで。
本当ならアルカから言おうと思っていた。
ソルアの指輪と交換しようと。
ソルアをいつでも感じていたいから、アルカのそれとソルアのそれを交換しようと。
ソルアの言葉はアルカが言う筈の言葉だった。
ソルアは何も知らない。
アルカがこれからしようとしている事も。
何故ソルアの指輪を欲しているのかも。
アルカが交換しようとも言わないのに、ソルアから言ってきた。
とてつもない罪悪感を感じる。
ソルアがどんな気持ちでアルカに渡したのか分かるからこそ、激しい罪悪感に苛まれる。
けれどもアルカは顔にも態度にもそれを表さなかった。
「いいの?ソルアが大切にしてる指輪だろ?」
嬉しそうな声でソルアに問う。
けれども顔は見れなくて、掌の上に光る指輪を見ていた。
「大切だからこそ、大切なアルカにやるんだ」
「・・・ありがとう。大事にするよ。死ぬまで絶対にこの指から外さない」
「馬鹿か、お前は。まだまだ二人で生きてくんだよ」
ソルアが王国の指輪をアルカの指にはめてくれる。
「似合うじゃねえか」
その満足げな声に我慢できなくて、愛しい胸に顔を埋めた。
ソルアが優しくアルカを抱き締めてくれる。
「ソルア、聞いて。このサージベル王国はいつかソルアが治めるべき国なんだ」
どうした?と柔らかく問うソルアに、アルカはこの国の未来を語る。
「ソルアなら出来るよ。この国の未来を、ソルアならきっと取り戻せる。ソルアならきっと出来る筈なんだ」
アルカの望んだ未来。
「ソルアなら誰もが死ぬ時に、この国に生まれて良かったって思うような国に出来る筈なんだ」
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