小説という名の日記A(栞機能無し)
4
乳母の必死の呼び掛け。
ぐずぐずしてはいられないと、ただただ二人を急かしている。
切迫した事態に二人も頷く他なかった。
「アルカ、ソルア様をお守りしなさい。ソルア様、アルカを宜しくお願い致します」
乳母が懐から袋を取り出す。
ありったけの給金を袋ごとソルアに手渡した。
「どうか無事に生きてください」
乳母に強くソルアが頷く。
「アルカを死なせやしない。俺は必ず戻ってくる」
アルカも母に強く頷く。
「ソルアと必ず生きてみせます。そしていつかソルアと戻ってきます」
門には既に兵が居る。
アルカと乳母しか知らない抜け穴。
誰にも見つからぬよう其処から二人を見送った。
乳母は一人の男を思い浮かべる。
ヌド王が最も信頼を寄せていた人物。
ヌド王の腹心、ラウシル。
ラウシルは最近、ソースフル国への国交を求めに旅立ったばかり。
きっとドラグはそれを狙っていた。
ラウシルが居ればドラグの好き勝手には出来ない。
ラウシルはドラグの好き勝手を許さない。
ヌド王とソルア王子の為に忠誠を尽くしている。
乳母は叶わないと知りながら、ラウシルの帰郷を切望した。
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