小説という名の日記A(栞機能無し)
2
「でも・・・」
「お前と俺は知り合う以前の関係だ」
それでも縋ろうとするあいつを、その一言で切り捨てる。
優香を苦しめるだけじゃない。
お前だって苦しむ。
優香に対する罪悪感と、お前の母親に対する罪悪感で苦しむ事になる。
お前のそれは一時的な気の迷い。
親友が居なくなった寂しさから来た一時的な気の迷い。
「大地、こんなとこに居たんだぁ。優香、探しちゃったよ」
突然割り込んできた声。
見事なまでに貼り付けた笑顔。
驚いたあいつが俺の手を離す。
その隙に俺はあいつから距離をとった。
「こんなとこで何してんの?」
俺の存在を優香が無視している。
白々しいほどに大地だけに笑顔を向けて話し掛ける。
「何って・・・」
「あっ、そうだ。今度の日曜、大地ん家に遊びに行っていい?優香、久しぶりにお母さんとお話したいから遊びに行くね」
あいつにさえ喋る隙を与えようとしない。
明日提出のプリント。
今日はもう諦めた方がいいかもしれない。
明日の朝早く来て取り掛かろう。
俺は二人に背を向ける。
「あっ、尚人。待って」
「大地、優香と一緒に帰ろう」
後ろの二人の状況なんて俺には見えない。
俺を追い掛けようとするあいつを、優香が引き留めてでも居るんだろう。
早めに寝て明日早起きしなければ。
だったら帰ったら直ぐ風呂に入らなきゃな。
運のいいことに、今日は見たいテレビもない。
記憶から振り払う為に、これからの事を考える。
もう二度と忘れ物を取りに戻らないようにしよう。
俺は急ぎ足で家へと帰った。
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