小説という名の日記A(栞機能無し)
25
ソファーに座った途端、晃弘が言った。
「二人でやり直そうぜ」
最後の問い掛け。
返事は予想できていた。
いつもと同じような答え。
晃弘ならやり直せるよ。
航希が感情の消え失せた笑顔を浮かべている。
晃弘はその笑顔を真っ直ぐに見詰めて問い掛けた。
「航希はどうしたい?」
「俺は・・・」
答えを待った。
幾らでも待つつもりだった。
感情の抜け落ちた顔。
作った笑顔すらも引っ込める。
そして静かに航希が口を開いた。
「俺は死にたい」
黒い瞳に晃弘が映っていた。
その瞳を晃弘はしっかりと見詰める。
そして、分かった、と頷いた。
「俺と一緒に死のう」
航希の顔に一瞬感情が戻る。
だがそれは直ぐに消えて、また感情が見えなくなった。
一緒に死んでくれる?
ああ、お前が死ぬなら俺も死ぬ。
本当に?
ああ、本当だ。
本気で?
勿論、本気だ。
じゃあ一緒に死のうか。
勿論、一緒に死のうぜ。
軈て静かに航希が微笑んだ。
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