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小説という名の日記A(栞機能無し)
9



決して信用した訳ではない。
磨り硝子に映る影を眺めていても、動きは十分分かる。
晃弘は静かに扉を閉めて、壁に凭れ座り込んだ。

体育がある度、着替えるのが憂鬱だった。
顔を殴られないようにしても、偶に躱せない時がある。
顔に出来た痣はどうしようもなく、絡んできた奴と喧嘩した、で済ませた。
だが体の痣は絶えない。
流石にこれを人前に曝したくはなかった。

興味本位に追及されるのも、同情されるのも嫌だった。
航希のあれが何だかは分からないが、航希も知られたくない筈だった。



風呂から上がった航希に、バスタオルを放り投げる。

「しっかり拭いてこい」

視線を外して脱衣室から離れたから、どんな表情をしていたかは分からない。
服を着て出て来た航希は、髪を乾かしてもいなかった。

「まさか拭けって言うんじゃねえだろうな」

俺は自然乾燥でいいの。
宣う航希を押さえつけて、無理矢理髪を乾かした。



寝る時も包丁を手放さなかった。
青いダブルベッドは広く、二人でも余裕で寝れた。

航希が眠るまで起きているつもりだったが、いつの間にか眠っていた。
一日中歩き回って疲弊していた。
だからもしかしたら晃弘の方が早く寝たのかもしれない。

朝慌てて飛び起きて隣を見れば、航希はまだ寝ていた。
包丁は晃弘の体の下にあった。
















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