小説という名の日記A(栞機能無し)
2
男に訃報が届いたのは、そんな忙しい毎日の最中だった。
何よりも大切だった弟の死。
弟が少年達に殴られ息絶えたと言う。
男は知らなかった。
弟は喫煙者だった。
男が故郷に居た頃、弟はタバコを吸ってなかった。
だから弟が喫煙者だった事を、男はその訃報を聞くまで知らなかった。
タバコを吸っていた弟に少年達が絡んできたと言う。
少年達はタバコを吸う弟を悪だと罵り暴行した。
殴り、蹴り、動かなくなるまで弟を甚振った。
加減を知らない暴力に、弟は息絶えた。
取り調べで少年達は終始強気だったと言う。
タバコを吸う奴なんて人間のクズだ。
人間にとっての悪だ。
そんか奴は死んでも当然だ。
俺達は間違ってない。
悪を排除した俺達は誉められるべきだ。
そう言って弟を嘲笑ったと言う。
訃報を聞いた男は静かに涙した。
弟は男の活力の源だった。
弟の為にこの国を正しい方向へ導いた。
だが今、弟は何処にも居ない。
守るべき弟が何処にも居ない。
喉元から込み上げてくる嗚咽を抑えきれず、男は一人で慟哭した。
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