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小説という名の日記A(栞機能無し)
25


土曜日。



待ち合わせ場所で待ってると、彼が人混みを縫ってやって来た。

初めて見る彼の私服姿。
この前のゲームセンターは僕が買った安物だから、私服を見た内に入らない。

私服姿の彼は格好良い。
彼に凄く似合っている。
悲しい事に僕はブランド名やメーカー名が分からない。
当然値段も分からない。
だけど彼に良く似合っている事だけは分かる。



「よし、ちゃんとつけてるな」

僕の首に手をやって彼がネックレスを触る。

つけてもらってから勿論一度も外してない。
金属アレルギーって言葉があるけど、幸いなことに僕の体は健康体だ。
お風呂にも外さずに入った。
これは後から錆びないか心配になったけど、水に濡らしても大丈夫だったらしい。
朝起きて慌ててネックレスを見たけど、少しも錆びてなかった。

正直、彼がつけてた方が似合うと思う。
でも例え彼から返せと言われても、これだけは返せない。
これだけはどうしても持っていたい。
一生身につけておきたい。



遊園地行きのバスが来た。
遊びに行った事のない僕でも、バスの乗り方は知っている。
席が殆ど埋まっていて、僕は通路の邪魔にならないところで足を踏ん張って立った。

「随分多いんですね」

「土曜だからかな」

乗客の殆どが遊園地に行くらしい。

バスが揺れる度に、彼が僕を支えてくれる。
だから僕は安心して立っていられた。



やっぱり乗客の殆どが、遊園地に行く人達だった。
遊園地前のバス停で、ぞろぞろと人が降りていく。
僕も彼の後を付いて降りた。

子供から大人まで遊園地に入っていく。
母親の手を「早く」と子供が引っ張っている。
遊びに行った事のない僕は、両親と手を繋いだ事もない。
だけど早く行きたいというあの子供の気持ちは分かる。

「ほら、行くよ」

僕が子供を見ていると、彼が手を繋いで引っ張ってくれた。





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