[通常モード] [URL送信]

小説という名の日記A(栞機能無し)
8


柊吾は私のものよ。
あんたなんかに渡さない。

柊吾にはね、幸斗って息子も居るの。
あんただって知ってるでしょ?
幸斗はね、柊吾と私の愛の結晶よ
あんたなんか一生私に勝てない。

いい加減柊吾から離れて。
なんならあんた死ねば?

柊吾を返して。
さっさと返して。

今すぐ返せ。
誰がお前なんかに渡すもんか。

穂波美からの電話。
今度はごめんなさいも言わせて貰えなかった。
きっと俺に喋らせる気はなかった。



「ただいま」

俺は柊吾の家族じゃない。
だけど柊吾はいつだってそう言って入ってくる。
自分の家のように、鍵を開けてただいまを言う。

「おかえり」

柊吾は俺の家族じゃない。
だけど家族を出迎えるように、俺もそう返す。

そしていつものように、俺の家で夜飯を食べ風呂に入り、俺の隣で寝た。



翌日。二人して昼近くまで寝ていた。
穏やかな休日だった。
絶好の外出日和。
偶にはドライブでもするかと、柊吾の運転で海へ出掛けた。

「海とか久しぶりだな」

運転で疲れたのだろう。
腕を伸ばし柊吾が大きく伸びをする。

夏も盛りを過ぎたというのに、ちらほらと人が居る。
のんびりと砂浜を歩いて、適当な場所に腰を下ろした。

「あー、泳ぎてえ」

「流石に無理だって」

波に乗るサーファーを羨ましそうに眺める。

「俺もやりてえ」

「やった事ない癖に」

「うっせ。やろうと思えば、あれくらい俺にもできる」

他愛もない会話。
本当に穏やかで。

いっそこのまま時間が止まればいい。

だけど時間は止まらない。

そろそろ帰るぞ。
柊吾に促され車に戻る。
互いの服についた砂を払いあって車に乗った。



家に帰った途端、腹が減ったと柊吾が訴えた。

「何が食べたい?」

「カレー」

作ってやりたいとは思うが、ルーの買い置きが切れている。

「他には?」

「カレー」

子供のように柊吾が言い張った。

カレーを食べるまで言い続けるのが目に見えている。
高校からの付き合い。
柊吾の我が儘には疾くに慣れた。





[*前へ][次へ#]
[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!