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缶ジュース







『あーもうツナ君のばかばかばかばかばかばかぁ!』



クッションを殴りつけ、床に叩き付け、壁に投げつけ肩で呼吸をしている私はかなりヒステリックで、見ていられない状態だと思う。

あまりの音に隣からは"どうした京子"なんてお兄ちゃんの声が聞こえてくる。
でも、真っ赤になった目だとか悲惨な部屋だとか 今の私の姿を見せられる訳もないから、鍵を閉めたままの扉がガチャガチャ鳴るだけ。その音さえももう嫌に感じて、柄にもなく黙って、なんて怒鳴ってしまった。


中学が同じだったツナ君は、高校に行っていきなり格好良くなった。
ダメツナなんて呼ばれてた筈なのに、いきなりスポーツも勉強も出来るようになって一気にモテ始めた。もともと ルックスが悪かった訳じゃないし、獄寺君や山本君と3人でいるともう女子の取り巻きが半端ないくらい。
その取り巻きを遠くからぼーっと眺めてる私だったのに、一変したツナ君から告白されて、付き合う事になったのが1ヶ月前の事。



―そう、ちょうど1ヶ月前。


―つまり、今日は2人の1ヶ月記念日だった。


―筈、なのに。




『なんで…なんで…っ』


そのツナ君は何も言ってこないし、さっさと先に帰ってしまった。

もしかしたら電話が来るかも、なんて事を考えて急いで帰宅、それから現在23:50までずっと電話の前にいたのだけれども1度も電話が鳴ることはなく、涙をこらえきれなくなった私は部屋に籠もってクッションに怒りとむなしさを叩き付けた。


『なんで、変わっちゃったの…っ?』


中学生の、数年前のツナ君だったら一緒に帰ってくれただろうし、例え補修とかで一緒に帰れなくても電話だってしてくれた。実を言うと私はそんな彼が大好きだったから、高校に入って告白された時もOKしたのに。


『ツナ君の…ばか…』


優しかった彼はもうどこにもいないんだ、もういい。

そんな事を思い、ベッドに入ろうとしたその時。



コンコン。



窓の方から、何か音が聞こえた。

最初は空耳だろうと思ってスルーしようとしたのに、その音は何回も何回も聞こえてきて。
恐くなったのと気になったのと、私は思いきってカーテンを開けた。すると。



『京子、ちゃん』


そこにいたのはススキ色のツンツン頭をした、



『ツナ…君…?』



私の、彼氏だった。

季節は11月、取り敢えずYシャツ一枚の彼には辛いだろうと思い、今の自分の姿も全部忘れて急いで窓の鍵を開けた。

カラカラと小さな音だけたてて入ってきた夜の冷たい空気と まだそこにいるのが信じられない彼に私は固まったまま。
彼…ツナ君は立ち上がって、そんな私の頬に手を当てた。



『…ごめん、遅れて。…泣いてた?』

『!違っ…』

『しっ!お兄さんに見つかっちゃう』



危うく大声を出しかけた私の口を大きくなった手で塞いで、耳元で言う。
確かに今ここで大声を出したらお兄ちゃんが飛んでくるだろう。静かになった私を見てツナ君は"いい子"と呟いて、涙に濡れた目尻にキスを落とした。


『遅くなってごめん、リボーンがちょっと…『言い訳なんて聞きたくないよ…』…ごめん』


言いかけた彼の言葉を消すかのように、掠れた声で呟く。…あぁもうやだ、また涙出てきちゃった。


『…突然ですが、』


すすり泣くように揺れていた私の肩を抱きしめて、言葉通り突然言った彼。何事かと思って顔を上げると、彼は薄いハンカチを取り出した。


『ここに魔法のハンカチがあります』

『いや…今っ『いいから』


目を背けようとした私の顎を優しく掴んで、再びその方向を向かせる。ひらひらとふって"何の変哲もありませんね"と言った彼は、優しい表情をしていた。


『ここには何もありません。でも、このハンカチを丸めてたたくと―…?』


私の手をハンカチの上まで持って行き、自分の手に重ねてトントンと優しくたたく。何も起きないじゃない、と言おうとする前に、彼はそのハンカチをサッと宙に引いた。


『え…っ』

『ほら、』


ヒラ、と舞ったハンカチから2本の缶コーヒーが現れ、コトンと床に舞い降りた(そう、音もなく!)。

彼はそれを手に取り、2つとも開けて1本を私に差し出し、ニッコリ笑ってこう言った。



『する?1ヶ月記念の乾杯』



温かい缶と彼の冷たい手が私の手に触れ、ドキンと胸が高鳴る。…さっきまであんなに許さない、もう嫌いになってやるとか思ってたのに。



『缶コーヒーだし、』

『うん』

『あと数分しかないし、』

『うん』

『私の部屋だし誰かさんは連絡もなしに帰っちゃうし電話もくれなかったけど、』

『…ごめ『でも、』


カタン、と自分のコーヒーを彼のに当て、顔を見る。
…昔は同じくらいだった背丈も、今は見上げないとダメなくらいになってるし、少し驚いたような表情が最高に格好良くて頬に熱が集中するのが自分でも分かった。



『ありがとう、ツナ君…』



お互い、微笑みくらいの笑顔でコーヒーを飲む。

なんだかんだ言っても彼の事が好きなんだ、なんて考えながらも、自然に唇を重ねた。








―――――

甘い!!
なんか京子ちゃんがヒステリックな上、缶ジュースがいつのまにか缶コーヒーに!←

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あきゅろす。
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