由来
由来
『…ツナ』
『ん?』
夜が本格的に始まった時間,リボーンが口を開いた。
昼間に終わらせる事が出来なかった執務をやりつつ,リボーンの話に耳を傾ける。
『…お前,なんでレイを拾ったんだ?』
『…え?』
『単純に…興味があっただけじゃねぇだろ?』
突然の事に,思わず手が止まる。レイ…?
『…さぁ…ね。なんでだろ?』
ポツリ,ふいに出た言葉だった。
それを聞いていた男はしかめっ面をしたが…俺は構わずに続けた。
『興味,と云えば…興味だった』
なんでかは,俺も解らないのだ。実は。
『…俺にも解んない』
自分で言ってるのに自分でもよく解らない。…ま,人間そんなもんだろ。
笑って言うと,リボーンは呆れたようにエスプレッソを啜った。
『…じゃあ,由来は?』
『由来…?』
『あぁ。"レイ"の由来だ』
"レイ"。
俺が付けた,彼女の名前。
由来…な。
『…"麗しい"の"麗"で,"礼儀"の"礼"かなぁ?』
『…だから片仮名なのか』
『まぁそーいうことだね』
麗と礼でレイ。あぁ,あとは…
『ゼロの…零』
『…は?』
返ってきたのは間抜けな声。それも無視して,俺はポツリと言葉を繋ぐ。
『…過去なんか気にしないで,生きていって欲しいと思ったんだ。零から』
レイに,新たな人生を楽しんでほしかった。
記憶にないだけで,きっと辛い過去を持っているだろうと思ったから。
『…そうか』
リボーンの呟いた言葉が,静かな執務室に響いた。
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