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あなたのこころ、わたしにください。



ひとはね、しあわせになるためにうまれてきたんだよ。
しあわせになるためにいきてるの。
それはだれもがのぞみ、えたいもの。














どうして、私はそうじゃないんだろう。どうして、お父さんとお母さんは別れなきゃならなかったのかな。
互いに好きだから結婚したくせに、どうして離婚なんて存在するのかな。
私にとって、大切で、唯一の肉親が離れ離れにならなければならなかったのは、何故?


だいすきな友達はいるし、学校に行けば楽しい事は沢山ある。
都会みたいに煌びやかで何もかもは揃っていないけど、十分全てが満ち足りている筈なのに。
時々、虚しくなって、心の奥がすぅって冷たくなって行く。

まるで日常に流して、辛い事、哀しい事全部忘れようとしているみたい。
忘れられる訳ないのにね。目の前に在る全ての現実から、逃げる事は出来ないけれど。些細な事で魅ぃちゃんとケンカしたその日は心が潰れる程哀しくて、他の事なにも考えられなくなって。昨日までの悩みが、まるでなくなったみたいに頭の中を彼女が支配した。
約束を守れなかったレナが悪かったの。だけど、こっちの事情も聴かないでいじけちゃって、もう知らない、何て言うから。つい、魅ぃちゃんなんて嫌い、何て言っちゃって後は堂々巡り。
苦しかった。ケンカなんてしたくなかったのに、一歩間違えて大切な友達さえ傷付ける。まだまだ私は子供なんだ。こんな事にも気付けないなんて。
魅ぃちゃんが圭一君を信頼して彼の手を借りようとしたり、私の居ない所でふたりだけが一緒なのがとてもとても辛かった。
早く、謝らなきゃ、仲直りしなきゃ。置いて行かれるかもしれない。

彼女が励ましてくれたから、不安がる私の手を握ってくれたから、立って居られたのに。このままじゃ、魅ぃちゃんは圭一君と一緒に行って仕舞う。そんなの、いやだよ。
魅ぃちゃんさえ居れば私は笑って居られる気がしたの。

そうしたらこれ以上辛い事なんて、この世界にはないのかも、何て。

そうだ。私はだいすきな魅ぃちゃんの事だけを考えていよう。邪魔者は排除して終って。ひとりに、なんか、なるもんか。後から現われたのは圭一君で、私はずっと魅ぃちゃんと居た。


「魅ぃちゃん魅ぃちゃん魅ぃちゃん、魅ぃちゃん」


あなたのその手を、心を、全て、私に下さい。
ひとはね、しあわせになるためにうまれてきたんだよ。そう、誰かが言ったの。言ったそのひとはお父さんを捨てて別の男を選んだ。
しあわせになるためにすてなければならないものなんて、ない筈なのに。
あの人は私達の手を離したんだよ。自分のシアワセとやらと引き換えに。
引き換えにするものが、代償が必要だというのなら、私はゴミ山から持ち帰った全てを差し出そう。かぁいいと集めた宝物をひとつ残さず全部。

しあわせになるためになにをしてもかまわないのなら、私は、今お父さんに近付く悪魔をこの世から永久に消して、それから、それから―


にやりと人知れず零れた笑みを隠して、鉈を握ったらその背に彼女の声がした。


「レナ、この間はごめん…おじさん、レナの気持ちも考えずに、頭ごなしに怒ったりしてさ……ほんっとごめんね」


震えるこの手は、いつも、あなたの言葉と心が崩してゆくの。
ねぇ、魅ぃちゃん、私は、しあわせになれるかな。
私達は、願ってもいいですか。この心全てが、満たされる日々が訪れる事を。









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23415.村棋沙仁





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