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そして、私は『私』になる。


辿り着いた、この地こそ。
本当に求めて来た場所だったの。
私は、『私』になりたかった。大切なひとと、今度こそ幸せになるんだって決意をして、雛見沢の土を踏み締める。

ずっと、ずっと焦がれていたのは、穏やかな日常、幸せでした。













転校して来たばかりの日は、此所から全てがはじまるのだと解っていても、基盤がしっかりして居なかった為に不安で心がとてもアンバランスだった。
ひとりだ、なんて思っちゃダメ。お父さんと私は、此所で、掴めなかったものを手に入れるんだから。
笑って、過ごす、ただそれだけ為に、私は名前を棄てた。

今日、この場所で『竜宮礼奈』は『竜宮レナ』に生まれ変わる。
上手く、発音出来たかな。
都会とは違う、少人数のクラスメイトの前で。


「レナだね、よし、覚えた。私は園崎魅音。好きに呼んでくれて良いからね」


ぱたぱたと寄って来た女の子達が次々に自己紹介してみせる。
向こうじゃ、こんな小さな小学生と同じ教室で一緒に勉強するなんて、信じられない事だけど、この場所は特別だから。
何処かあたたかいこの空気は他と異なる。
そういう所が何となく、再スタートを後押ししてくれているような気がした。


「レナレナぁー、あんたさ、部活って興味ない?あるよね?」
「え、え?」


まだ何も解らない私の手を取ってくれたのは、委員長の園崎魅音。
みんなより年上で、先生に色んな事を任されているから、クラスの生徒の事も頼まれたのかな、なんて思っていたけれど。


「私はさ、年の近い女の子が来てくれて嬉しいんだよ。やっと私と渡り合える相手が見付かったんじゃないかって」
「魅音さん、あれだけコテンパンに負けて置いて、渡り合うもへったくれもありませんわ!」
「にぱー、本当は魅ぃが毎回ビリっけつなのですよ」
「こら、おじさんは頑張って勧誘活動してんだからね。それを横から邪魔するんじゃないよ!」


嘘は良くないのです、と髪の長い女の子が最年長の彼女を叱る。ぶー、何て唇を尖らせる委員長はとても年上には見えなかった。
もうひとりの子はそれを呆れたように見て居て、そんな風景がすごく微笑ましい。


「はぅ、みんなかぁいい」
「このふたりは特に人気あるからね。そうそう、優勝者はこのかぁいい女の子に何しても良いんだよ。どう、やらない?」


可愛いと思ったのは、年上らしくない彼女もなのだけど、それを告げるのは後回しにして、二つ返事で頷いた。同時に3人が燥ぎ出す。それに後から来た男の子も加わって、今までになかったくらい歓迎された。

この場所の、解き放たれたような、その笑顔が、私を導いてくれそうな気がしたの。
此所でなら、私はきっと。


「レナ」


彼女がその名前を呼んだ時、どくり、心音が高鳴った。
細胞がひとつふたつ、覚醒してゆく。

そして、私は漸く『私』に成れる。
今度こそ、この場所で、一世一代の物語が幕を開け始めた。














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22118.村棋沙仁



語彙が乏しい故に何が言いたいのかさっぱりわからん…○| ̄|_








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