鬼の、棲処.
ヒトは誰しもそのナカに鬼を飼って居るイキモノだと、君は知っているか。
鬼は怒りを好み、その印を身に刻む。
その表情は、傍から見ても恐ろしく、近寄り難い。
眉間に寄る、数本の皺。
鬼の顔からその証が消える事はない。感情を察知し、人の眉間に姿を現じ、何時しか内面から喰らってゆく。
オニを棲まわせてはいけないよ。
きっと、知らぬ間に誰かを傷付けて仕舞うから。
「魅ぃちゃん、」
鬼の面はおそろしいね。
だけどね、その顔を私は手に入れて仕舞ったの。
想えば想う程狂おしく、修羅を被る。
「レナのね、ココに、鬼が棲んでるの」
解ってた。その表情を見た周りのヒトが、どんなに顔を引きつらせて、離れて行って仕舞うのか。
だって、怖いから。捕って喰われて仕舞いそうなくらいに、祟り殺されて仕舞うんじゃないかと畏れてしまう程に。
なのにね、もうダメみたい。この、身体は。
その手を捕えて眉間に触れさせる。
すっと、なぞるくらいじゃ解らないかな、かな。大好きな人と居る時、悪兒はとっても大人しくて、居るのかどうかも、解らなくなって仕舞う。
本当はこんなに身近に居て、今も私を喰らおうとしているのに。
「レナに、鬼なんて居る訳ないでしょ」
きっとこれがふたりきりの世界なら。魅ぃちゃんの言葉も嘘にならなかったね。
やさしく、触れる温かくて柔らかいこのヒトの手が、レナだけの、ものだったなら。きっと鬼なんて生まれなかった。
どす黒くて、ドロドロに濁ったココロが、悪いモノを創ってしまう。そうして、何時しかそれが全てを飲み込むの。私の理性迄も。
悪くない悪くない、誰も。それなら私はどうして、ナニカを憎んでいるの。
肉塊がごろりと転がって、血溜まりを見て、息のない事を確認した後でしか、安堵出来なかったのは何故、
魅ぃちゃんはレナと、ずぅっと一緒なの。邪魔なんてさせない。させるもんか。
ココにはふたりだけが居ればいい。
「だいすき、だよ。魅ぃちゃん」
濁りきった悪には生け贄を捧げて鎮めたから。もう、大丈夫。
漸く世界にふたりきり。
それなのに血塗れの私を、泣き出しそうな表情で抱える魅ぃちゃん。なかないで、もう鬼は居ないの。
「…………、」
何時だって幸福を願っていた筈だ。
だから、それを叶えようとしただけ。
階段を踏み外した私だけが、堕ちてゆくとも知らずに。
もう誰も、私達の邪魔をしないで。
鬼の棲処はどろりと、朽ち果てる。
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21.5.5.村棋沙仁
こどもの日に更新する内容がこんなのですみません;意味も解らないし…(滅)
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