思えば、昔から聞き分けのない子でした。
千秋がえらく真面目な面持ちで切り出すので、どんな話かとこちらも真摯に訊こうとして馬鹿を見る。という事が最近妙に増えた。
「俺達、そろそろ倦怠期だと思うんだが」
毎日毎日、阿呆のように如月律如月律と耳にタコ所かマメが出来て化膿して終うんじゃないかと思うくらいに惚気話を散々聴いて来て、挙げ句、ちょっと会って来ると宣言して授業を抜け出す始末だったというのにいきなり何を言い出すのか。もうこいつ知らんわ、と最近は話半分に聴いていてどうでも良かったのだが。
全国が終わって、例の旅行も終わって10月。千秋が如月律不足を起こして発作所か、訳の解らない事を言い始めて終った。
「千秋…倦怠期って意味知っとう？」
「は、知ってるから言ってるに決まってるだろ」
正直ほんまうざいねん。と切り捨てて終えたらどんなに良いか。
芹沢はスタスタ逃げて終ったし、話を聴いてやるのは自分しか居ない。ファンが見たらさめざめと嘆きそうな様だ。
「地味子の小細工にも飽きて来た所だ。それに今の現状を打破したい」
向こうの連中だって、大事な部長を易々とこっちに渡そうとは思わないだろう。特に小日向かなで、彼女は誰より如月律を慕って居たし、千秋を敵視していた。
もう少しで騙せそうな如月律を寸での所で攫って行くのは何時も彼女だ。
「そないに星奏の子、いじめんといてや。小日向ちゃんかて可哀相やわ。卒業まで様子見くらいにしといた方がええんとちゃうの？」
「馬鹿を言うな。先に言っただろう、倦怠期なんだ」
「……あんな、千秋、千秋がどう考えとるか知らんけど、倦怠期って飽て嫌になる事やねん」
「そやから、さっきから言うてるやんか、俺は地味子の嫌がらせに飽きたんや」
「俺達ってそっちなん？小日向ちゃんと千秋の事？」
怒りに任せて余所行きモードを解除した千秋が、ばん、と机を叩いて立ち上がる。むしろこっちが怒りたい。
悪いのは100%余所者のこちらで、向こうはただ、部長を守ろうとしているだけなのだ。
最大限の防衛に徹しているだけなのだが、千秋にはどうにも嫌がらせに見えるらしい。
「倦怠期って普通夫婦とか、カップルに使てるやろ。ライバル同士で倦怠期何かあらへんよ。おかしいやんか」
「おかしないよ、普通や！」
「…もうええわ、フツーにしといたる。千秋の中でだけのフツーやな、フツー」
「なんやの、その態度、腹立つわ」
毎日惚気と愚痴に耳を傾けてやってると言うのに感謝のかの字もないらしい。まあ、もう慣れて終ったけれど。
東金千秋は如月律と出会って変わって終った。良い意味で言えば、音楽方面で音色に更に甘美さが増してファンが急激に増えた、くらいか。悪い方向ならもっとある。芹沢はツッコミ疲れて居るし、小日向かなではトラップ作成能力に磨きが掛かって如月弟は頭を抱えている。
そして、俺。土岐蓬生は今日もふ抜けた東金千秋の如月律に対する想いやらこれからの計画やらを耳にタコが住み着く程聴かされるのだ。
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22.5.25.村棋沙仁
神戸と大阪の違いがいまいち良くわからないので大いに間違ってます○｜￣｜＿
土岐はもっと落ち着いててあんまり怒らないひとだと思います！
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