[通常モード] [URL送信]
1


俺には大好きな子がいる。
しかも有り得ないぐらい可愛い。美人。しかも頭もいい、運動神経もいい。
まさに文武両断ってこの人のことを言うんだと思う。

そうそう、性格もいいんだよ これがまた。


そして、そんな完璧な人から電話がきた。
高校になってから接点がなくてメールも出来なかった俺にとっては何とも言えないぐらいのチャンス。


「は、はい」

「あ、名字です。慎二くん?」

「う、うん。 いきなりだなー、何かあったのか?」


緊張しすぎて携帯を握ってる手は汗がじんわりと滲み出てくる。
どもりすぎだし、俺。かっこ悪すぎるし、俺。


「じゃ、またね」

「じゃーなー」


会話が終わるころには緊張とか手汗も出なくなっていて、暫く一安心。
と、言っても日曜日会うわけで。
俺はベットに勢い良く倒れこんで、どんな風になってんだろなんて思っては唸っていた。







・・・・・

「・・・・間違ってないよな・・」

待ち合わせ場所も間違ってねーはず。
時間も10時って言ってたよな。

俺はそわそわと周りを見ていると不意に電話での声。


「ごめん! 待った?」

はぁはぁと肩で息をしながら俺を見上げる名前ちゃん。
相変わらず綺麗な顔立ちしてる。


「今来たとこ」

笑ってみせると彼女はニコリと笑ってよかった、と溢した。
思えば卒業して一回も会ってねーんだな。


「じゃ、何処行く?」

「どこでもいいけど」

「・・・じゃ、映画でも見よっか」


名前ちゃんはそう笑って俺の手を引っ張る。
俺は気取りながら彼女の前を歩く。内心心臓がバクバク言ってるわけなのだが。



見た映画は失恋もので、男のほうが振られるというまさに俺を元にしたかのような映画。
思わず涙が流れてくる。

俺は隣りの名前ちゃんには分からないようにそれを拭う。
幾らなんでも気付かれたらダサいから。




映画が終わってお洒落なカフェに入ることになった。
彼女一人じゃ絵になるのに、俺が向かいあってるだけでそうはならないのが不思議だ。
あちらこちらで男が名前ちゃんを見ていて、俺は居心地が悪かった。

俺なんかとつり合わないとは知っていたはずなのに。
カチャンとコーヒーカップを置く。


「こう言うところ、いやだった?」

「そんなことないけど」

「・・・・そっか。 じゃ、もう出ようか」


名前ちゃんはニコリとまた笑ってみせて俺の手を引く。
彼女のカップにはまだ茶色の液体が残っていて、気を使ってくれたんだと気が付く。


朱く染まる街は美しいはずで、勿論隣りで歩いてる彼女も美しくて可愛いかずなのに何処か寂しくて。

本当はこうなるんじゃないかって、薄々分かっていたはずなのに。
少しぐらい名前ちゃんを笑わせる事ぐらい出来るなんて安易に考えていた俺はどうしようもない馬鹿だった。

「今日は付き合ってくれてありがとう」


駅のターミナルまで着くと名前ちゃんは笑う。

「うん」


「これでもうさよならだね」

そう笑う名前ちゃん。手を振って改札を通って行ってしまった。
俺は今、気が付いた。

彼女が笑うときって大抵かなしいときなんだって。




いまさら気が付いたって彼女はもう見えなくなっていて。
俺は何度も何度も彼女の名前を呼んでみるけれど、電車が止まって発進する音が響いた。
もう会うことはないだなんて考えたくなかった。

ずっとずっと名前ちゃんを好きでいたい。
さみしくて、空しすぎて。
こんなに想っていることをきっと彼女は知らないはずで。

せめて少し前みたいに一緒に話したい。


そんなちっぽけな願いさえもきっと叶わないにそっと祈る俺はどれほど愚かなのだろうか。



さびしい僕
(どうか神様、あの大切な人を忘れさせて)


すいません。女々しくなったけど小金井です。

1/28
 
 


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!