強襲@

 惑星の王宮内……王宮と王宮星を護る、騎士団の精鋭団長数十名と星の政治中核を成す元老院数名が、円卓を囲んで今後の星の行く末に対しての討議と意見交換が行われていた。
 元老院と呼ばれてはいるが、彼らは老人ではなく先代の老元老院たちから、叡知と職務を受け継いだ若い年代の者たちだった。

 甲冑に身を固めた王宮騎士団の団長たちも、高齢の者は少数で二十代から三十代の年齢者で構成されていた。
 室内には飲み物や軽食の皿を円卓の上に並べる、給事係の女性たちが忙しそうに働いている。

 騎士団長の中で紅一点の、長い後ろ髪を甲冑の背側に結び垂らした女性団長が口を開く。
「騎士団の立場から言わせてもらうと。北の村へ通じる街道の防衛と、道の整備を重点に今期は進めるべきです……北の街道からの物資と人の流れは、この王宮首都にとって繁栄不可欠です。北の街道が何らかの原因で閉ざされたならば、王宮首都は滅亡したも同然です」
 若い元老院の青年が言った。
「騎士団の方々には近日に迫った、サーコ姫の婚礼の儀の警護の方を優先してお願いしたいのだが……街道整備の件は、我ら元老院の特別議会で議題として取り上げるようにしよう」
 熱い意見交換と討議が続く中、いきなり銀のトレイが石畳の床に落ちる音が響き。
 室内は静まり返った。音が聞こえてきた方向を見ると一人の給事役の少女が、怯えた表情で部屋の隅を見つめたまま佇んでいるのが見えた。
 一人の屈強な体躯をした騎士が、震えている少女に近づいて訊ねる。
「どうした? 大きな音をたてて」
 少女は怯えた表情で部屋の隅に以前から生じている、石積みの隙間を指差す。
「その隙間から、黒い変なモノが見えて」
 屈強な体躯の騎士は石壁の隙間を覗く……暗闇の中、蠢いている黒いモノが見えた。
「なんだ? ネズミじゃなさそうだが?」
 そう騎士が呟いた瞬間……覗いていた隙間から吹き出してきた、黒い触手の軍塊が騎士と少女を呑み込んだ。

 元老院の青年が叫ぶ。
「あの黒いモノは!?」
 騎士団長たちは、剣の柄を握り締め。槍を構える。
 床や壁や天井の隙間から次々と黒い触手が溢れ出てきた。
 給事女の一人が悲鳴を発して、ドアを開けて逃げ出そうとドアの取っ手を掴むと、鍵穴から出てきた黒い触手が給事女の手首に絡みつく。
「きゃあぁぁぁぁ!!!」
 絶叫する給事女の穴へ侵入を開始する触手……膣穴、肛門、口、鼻、眼、耳の穴からヘソの穴にまで触手に侵入された給事女は、脊髄神経を支配され……ガクッガクッと痙攣する……人体侵入の、おぞましい光景だった。
 窓や扉の隙間から侵入してきた黒い触手群によって、出口はすべて閉ざされ密室で、室内にいた者たちは触手から逃れるために部屋の中央へと必然に集まる。

「化け物め!」
 騎士団長たちは、剣や槍で迫ってくる触手群を斬り捨てる……斬るたびに、切断された触手からドス黒い体液が飛び散り室内を汚す。

 一人の給事少女が恐怖に耐えきれず窓に向かって触手の中を走り出した瞬間……先端が鋭い刃化した斬撃触手が、少女の首と胴体を寸断した。

 黒い体液を浴びて汚れた顔の、女騎士団長の顔に飛び散る赤い体液。
 茫然とする女騎士団長の目の前で、次々と給事係の少女や女性の首が切断されていく惨劇。
 給事女たちに続いて、先端が鋭く溝がある円錐系に変化した触手が、今度は元老院を襲いはじめた。
 ドリル状に回転する円錐触手は、元老院の胸部を狙って心臓に穴を開けて元老院たちを絶命させていく。
 勇猛果敢な騎士団団長たちは、次々と湧いてくる触手群を切り捨てる。
「この、化け物どもが!!」
 触手を斬り捨てている女騎士団長に、ある疑惑が浮かぶ。
(こいつらなぜ、給事をする者と元老院に異なった殺害をした? なぜ、我々騎士団団長に向かってこない? まさか、こいつら意思を持っていて、統一された行動をしている?)
 最後の元老院が胸に穴を開けられて殺害されると、触手の動きが一瞬止まった。
 鎌首を持ち上げて騎士団長たちを取り囲み、見下ろしているような触手群。
 次の瞬間……触手の表面が鉛色の金属色に変化して、先端が刃化した触手群が一斉に騎士団団長たちに襲い掛かってきた。

 強固な装甲触手に変化した黒触手に、斬りつけた剣や槍の刃先が折られる。
「斬れない!? 剣と槍が弾かれる!?」
「怯むな! 騎士団の名誉にかけて!」
 次々と、斬首されていく騎士団長たち。最後まで抵抗を続けていた女騎士団長も、ふいを突かれ首を切断されて倒れた。


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