分断触侵@

 ある辺境の惑星を見下ろす宇宙空間……女性の内部生殖器型をした、触手母船の丸窓から緑色の惑星を眺めている凍騎の姿があった。
 凍騎が後方に立つティティスに訊ねる。
「あの惑星はどんな星だ?」
「未開の惑星です……文明レベルは狩猟文明。人間は毛皮をまとって生活しています」
「簡単に『触侵』できる文明レベルだな……オレが動くまでもない」
「真珠色の白触手と深紅の赤触手が、あの星の『触侵』を行いたいと申し出てきました」
「白と赤の触手がか……いいだろう、あの星の『触侵』は任せる」
 凍騎は丸窓から離れて数歩あるいたところで、思い出したように立ち止まってティティスに言った。

「白触手と赤触手に伝えろ……『狩猟惑星』に降りるのなら、狩猟人類を手なずけるためのアイテムとして【人工タンパク質】の食料を大量に土産として持って行って、惑星でも量産しろとな……あの手の文明レベルの星なら食料事情が悪く。十分な栄養を得られていないだろうからな……人工タンパク質に、数種類の栄養素を混ぜろ」
「人工タンパク質の形状はどんな形に?」
「そうだな……」
 凍騎は少し考えたのち、加虐な笑みを浮かべた。

「以前、触侵した惑星の男女の肉体をモデルに形成しろ……首と手足を除いた形成でな。ついでに、触侵完了後に『触手』が生まれやすくなる、染色体と遺伝子の肉体改造成分も人工タンパク質に混ぜておけ」
「触侵した惑星の肉体をモデルに形成ですか?」
「別の星の人類人体モデルだ……同種族喰いにはならないだろう」
 と、凍騎は言った。

 そして、狩猟惑星へ向かって触手船団の中から一隻の精子型宇宙船が、大気圏内を摩擦熱で燃えながら狩猟惑星へ落下着陸していくと……残りの触手船団と触手小惑星は、狩猟惑星の星域から去っていった。

 白触手と赤触手が詰まった精子型宇宙船……のちに、狩猟惑星の人間たちから『白蛇神』『赤蛇神』『天ノ柱船』と称され。畏怖と崇拝の対象となる触手と、その宇宙船のファースト触侵のはじまりだった。

 精子型宇宙船が、狩猟惑星にある山の中腹に斜め四十五度の角度で突き刺さった状態から数年後……銀色の宇宙船 は植物に覆われ、宇宙船が山に突っ込んだ衝撃で入り口が生じた洞窟の前では。狩猟人類たちによる蛇神に畏怖と感謝をする祭事が行われていた。

 設けられた祭壇には葉っぱに乗せられた獣肉や魚介が、捧げ物として用意され。
 女たちが舞い躍り男たちが歌い、丸太の打楽器が打ち鳴らされていた。
 その触手を畏怖する祭事を、村人たちから少し離れた位置で寄り添って眺めている男女のカップルがいた。
 腰に獣の皮をフンドシのように巻いた男のユズキと、胸と腰を獣の皮水着で隠した女のサーコだった。

 ユズキの父親が族長を務める部族名は『ラバ族』……サーコの父親が族長を務める部族名は『リユ族』だった。
 二人の部族は数年前は食料の確保で敵対していた、敵同士の関係だったが。
 サーコとユズキは互いに引かれ合う恋人同士だった。
 ユズキが蛇神祭事を見て言った。

「バカらしい……あんな禍々しい生き物を、神と崇めるなんて」
 食料が不足して部族同士が少ない獲物を奪い合う時期に、蛇神〔触手〕は天からやって来た。
 洞窟の深部で蠢いていた赤と白の触手は、二つの部族に食料を与え……争いを鎮めた。
 ユズキが、手を握っているサーコ訊ねる。
「サーコも、赤と白の蛇神さまが与えてくれる。あの食べ物……あまり好きじゃないだろう」
 サーコは、周囲を気にしながらうなづく。

 赤い触手と白い触手が与えてくれる食べ物は不気味な人体型をしていた。
 頭と手足が無い、白い石膏像のような男女の生きている裸体のような食べ物で、頭と手足の切断面はのっぺりとしている。

 乳首と乳輪が綺麗なピンク色をしていて、男女の裸体にはそれぞれ性器と排泄孔がついている。
 女性裸体の食べ物〔人工合成タンパク質〕の性器をクパッと指で押し開くと、人間の未開発性器と同じ色をしていて、肛門はココア色をしていた。

 男性裸体の食べ物も亀頭の皮を剥くと未開発性器の色が現れ、肛門はココア色をしている。

 生きているように体温もあり、汗も出して触るとビクッビクッと動く裸体食料だったが、腹を裂いてみても内臓や骨や血は無く白い肉が詰まっているだけだった。
 排泄孔部分は体内に数十センチの筒になっていて、生殖器器官は子宮や卵巣……睾丸や精管だけが白い肉の中に入っていた。



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あきゅろす。
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